神仏霊場会への期待
時報随筆の来月号に寄稿した文章である。発刊前にアップしますね。
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「神仏霊場会への期待」
昨年から、この秋に正式発足が予定されている神仏霊場会の幹事役を仰せつかって、組織委員部会を担当している。神仏霊場会とは特別参拝社の伊勢神宮を中心に、京都、奈良、大阪、滋賀、兵庫、和歌山の近畿各県にまたがる東大寺、延暦寺、金剛峯寺や石清水八幡宮、上賀茂神社、熊野三山神社といった名刹寺院、神宮、大社など歴史ある主要な寺社約百三十ヶ所が加盟参加して、神仏混淆の霊場巡礼を行うのである。もちろんわが金峯山寺も修験道を代表する寺院として加盟している。
ご存じのように明治期に神仏分離政策が断行されて以来、必ずしも神と仏の間はうまく行っていなかった。というか、すごく疎遠な関係である。我ら修験道や神宮寺のように、神仏習合を旨とする寺社は徹底的に解体弾圧され、神社も寺もそれぞれが別々の道を歩んで久しい。そんなここ百三十年の時代の流れが、近年一挙に大変革期を迎え、もう一度、神と仏が融合し協調して、日本人の信仰心の礎を取り戻そうという動きを始めているのである。我ら修験道の復興もまたときを同じくして、大きなうねりを生みつつあると言える。
発起人の山折哲雄氏は「神道、仏教、学会の三者で神仏共存の伝統的な信仰を回復し、神仏霊場巡りを人々の心の旅として国民運動にまでつなげたい」と語っておられるが、まさに史上最大のこの大霊場会がそういう役目を担うのなら、こんな素晴らしいことはないであろう。
お正月には神社仏閣に初詣に行き、子供が生まれれば宮参りをし、お彼岸やお盆には墓参りする。そして結婚式はキリスト教会か神式で挙げ、お葬式となると僧侶を呼んで仏式で行う…かくの如く年がら年中、そして生まれてから死ぬまで一生涯にわたって、神と仏をわけ隔てることなく、常に自分の身近に神仏を置いてきたのが日本人の信仰である。神仏習合、神仏混淆の宗教観である。その大本にもう一度戻ろうというのが、神仏霊場会の試みなのだと理解している。
人心の荒廃が進み、神仏なき時代かと思うほど、野蛮で悲惨な事件が続出している我が国にとって、大きな救いとなるような、そんな神仏霊場会に育っていくことを念願してやまない。
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実は今日午後に3月2日の神仏霊場会創立以来、初の幹事役員会が東大寺で行われる。私も今から出席のため出かけます。
きけば3月の時点で加盟寺社は125ヶ所だったが、南都関連の大社・寺院の加盟が加わり、130をこえることになりそうです。
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