鬼の調伏
今年も無事、金峯山寺の節分会・鬼火の祭典を終了した。今年は管長猊下が休養中でご不在のため、例年になく本山内は淋しい行事催行となったが、それでも平日にもかかわらずたくさんの参詣者で境内は大いに賑わった。
本山の節分会の特徴は「鬼も内」と唱える鬼の調伏式である。なぜ金峯山寺では鬼も内なのか…。ご存じのようにこれは開祖役行者が鬼を折伏し弟子としたという故事によって執り行われているが、その故事を以下詳しく述べてみる。
役行者に付き従う者として、前鬼後鬼の二侍者は良く知られるところである。この二鬼が開祖の弟子となった説話は、開祖奇瑞の伝承の中でも興味深いものの一つであり、特に有名な説話は役公徴業録や役君形生記など江戸期に成立した役行者伝記に伝わる話…。
行者が生駒山の断髪山に登られた時(徴業録には行者二十一歳とある)、山中に赤眼、黄口という夫婦の鬼が住んでいて、それに鬼一、鬼次、鬼助、鬼虎、鬼彦と名付ける五子があった。この鬼が付近の人の子を捕らえて食うので、人々は困っていた。行者は山中に入って、二鬼の最愛の子である鬼彦なるものを捕らえて鉄鉢の内に匿された。二鬼は顔色を変えて驚き四方を捜し求めたが更に見えない。遂に行者の所へ到って愛児の行方を尋ねた。その時行者が言われるのに「汝らと雖もわが子を愛してその行方を求めるではないか。然るに何故に人の子を捕らえて食らうのか」。二鬼曰く「我ら初めは禽獣を捕らえて食うていたが、禽獣尽きて無いので終に人の子をとって食らうのである」と。行者更に教戒して云うに「汝らよ、不動明王は空中にいまして、火焔赫然として、眼は電の如く声は雷の如く、金剛の利剣を提げ、三昧の索を持って常に悪魔を降伏されるのである。汝らももし改めなかったならば、かの明王の怒りに遇いて必ずや後悔するであろう」と。二鬼大いに恐れ驚き行者に許しを請うたので、行者は二鬼に不動経の見我身者発菩提心以下の偈を授けて誦せしめ、教訓を垂れ随身とせられた。彼らは逐に悪心を転じて善心となり、深く行者に帰伏し、果実を集め水を汲み、薪を拾って食をなし、行者の命に従い山野開拓の為に尽くしたという。
橋田壽賀子の「ワタオニ」ではないが、今や世間は鬼ばかりである。我が子を殺す鬼、親を殺す鬼。無差別に人を殺す鬼。この国を平気でアメリカや中国に売り渡す鬼。赤眼・黄口も叶わないような鬼以下の人間ばかりである…。蔵王堂で暴れ狂う鬼が「鬼も内」のかけ声によって豆を撒かれ、平伏し改心する鬼の姿を見て、今こそ、役行者の調伏力が希求されていると、思うばかりの今年の節分会であった。
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