陽水な夜2…師を思う
昨日のブログにも少し書いたとおり、一昨夜、井上揚水氏の透き通るような異次元的な歌声を聞きながら、私は全く別な世界で、深く自分の人生を考えていた。
・・・私には人生の師が3人いる。
一人は8年前に亡くなった実父。父であり、この修験の道に導いた師僧である。父の元に生まれてきてよかったと思っている。
もう一人は龍谷大学以来、ずっと師事しているA博士。大学での出会いがご縁で、師に一生、師事出来る幸せはとてつもなく大きいことで、私にとって、今でも会うたびに示唆に富んだアドバイスと慈愛をいただける関係には私自身の運の良さを自覚させてくれる。ホントに、私の人生にかけがえのない恩師である。
そして最後の一人は、高校1年生のときからそばで随身をさせていただいていた、今の師である。まるで父に対するような心持ちで38年、仕えさせていただいている。まあ仕えるといっても、それほど従順じゃないし、言うことをきかない、師には到底弟子とは思えないような、きっと不出来な人間に違いないが…。
その師が今、重い病床にある。その病床で、私はこのところ行くたびにすごく感動するのだ。師はその病床において「吉野修験の究極は蔵王一仏信仰である」と宣言された。私にとってこれは本当に感動する一言だったのである。
かねてより、私が密かに理想とする生き方は、『往生要集』を著した恵心僧都源信和尚である。
源信和尚の何を理想とするのか…というと、和尚最晩年の著作に『一乗要訣』という本がある。この『一乗要訣』の中で和尚は「一乗仏教を極めて、最後は阿弥陀を祈る」という一言を残されている。この文章に接したとき、「私もいづれはかくありたい」と願い続けるところとなった。
私はいつまでもへなちょこの山伏のままで、まともな修行もなかなか出来ないでいる、ほんとに不具合な、出来損ないの修験な僧侶である。それは一番私が知っている。でも、とめどなく生まれ続ける煩悩と、哀しいくらいに猥雑な日々に追われながらも、僧侶として縁をいただいた以上は「見性」(悟り)を得たいし、どこかで、いつか、きっと、信仰的安心を獲得したいと願っている。
もちろん源信和尚のように優秀でないが、でも、修験信仰のご縁の中で、さまざまな関わり合いを経た結果、源信僧都とまではいかないまでも、いつかは、なにか源信和尚のような「最後は阿弥陀を祈る」と言い切れる、信仰的境地を得たいと思っているのである。
だから、先日来、病床の師のもとにいき「蔵王一仏」信仰を聴くたびに、まさに師は修験信仰を極めて、ついに、源信和尚の境地に到達されているんだと身震いするような思いで、この言葉を聴かせて頂いているのだ。
この私の思いは、まだ師には伝えていない。でも、コンサート会場に舞い降りた陽水氏の透き通るような歌声を聞きながら、妙に頭が冴えて、「この思い」を師に伝えなくてはと、そのことばかりが何度も心の中に繰り返されたのであった。
師とはここ数年、少し距離があった。その全ては私自身のせいだとわかっていたが、病床にある師の言葉を聞いて、その距離は私の中で一瞬に埋まっている。それほどの感動だったのであるが、それをちゃんと師に言わなくてはいけない!ということを、この夜の陽水氏の歌は私の心に教えてくれたのだった。
もちろん、陽水氏はそんなこと知るよしもないし、知ったこっちゃないだろう。でも私にとっては、そんな感動の、陽水な夜であった。
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コメント
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わ~! なんだか素敵な師弟関係ですね~!(*^_^*)
距離があろうが疎遠になろうがお師匠様とは繋がっていらっしゃるんですね!?
仏縁ってありがたいですね~!
もしかしたら、山人様とお師僧様は
離れていても同じものを感じていらっしゃったのかもしれませんね?
山人様が心に思うことをおっしゃったら
にっこり微笑んで下さるかもしれませんよ?(*^-^)b
投稿: 優婆塞BB | 2009年4月20日 (月) 21時40分
BBさん、うーーーん、どうなんでしょうかねえ。その辺、ちょっとホントのところはわかりませんが、私自身の至らなさを感じるこのゴロです。
投稿: 吉野山人 | 2009年4月20日 (月) 22時50分
(*´v゚*)ゞ初めてコメントさせて頂きます、どうぞ宜しくお願い致します。
素敵な夜をお過ごしになられたのですね・・・そんなお話にこちらも素敵に夜を迎える事ができました。
「無財七施」でしょうか。普段何気なく過ごしてしまいがちですが、私も感謝している人へ思いを伝えてみたいと思います
後悔だけは残したくないですよ。。。
吉野仙人様の思いがどうか伝わりますように。
(-人-)合掌
投稿: h.t | 2009年4月21日 (火) 01時29分
h.tさん。はじめまして。。
ども、ありがとうございます。
なかなか気づけそうで気づけないことが世の中にはあります。 実は陽水な夜1に書きましたように、陽水を聞いてきた時間と師に仕えた時間はほぼ同じなのです。高一からのおつきあい・・・そんな符合があの夜の気分に繋がっていました。
投稿: 吉野山人 | 2009年4月21日 (火) 03時36分