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母との別れ・・・

13日の朝、母が亡くなりました。いまわのきわには立ち会えませんでしたが、前日の夕方、病室で会って話も出来ました。今振り返ると、あのとき、母との今生の別れが出来ていたように思えます。
母はここ数年、何度も入院をしました。入院退院を繰り返すたびに弱っていきました。そして今年1月に緊急入院したときは肝硬変と心臓・腎臓の機能低下で危篤状態になり、医者から、余命1週間と宣告をされました。あの時、私は泣いてばかりいました。その後、奇跡的に持ち直して、病院で車いすにのって、食堂まで食事に行けるくらいには回復させていただきました。でも、結局、自分で立って歩けるほどの元気を取り戻すことなく、9ヶ月にわたる闘病生活が続きました。
歩くことも出来ないのに、二度目の病院で更に転院を促され、このままどうなるのか…と、その行く末を心配をするようにさえなりました。そんな母も今月に入ってから、食欲がなくなってきて、ちょうど、片岡仁左衛門さんの歌舞伎奉納舞台の前後から、母の体調が急速に悪くなっていました。
12日の夕方、急遽、見舞いに帰りました。ベットの上で、丸くなって、片目しか開けられない母の姿は痛々しかったです。「もういいよね…」って思わず、呟きました。はっきりとは会話が出来なくなっていましたが、あうあうと返事をし、片目を開いたその眼は「もういい…」って答えているようでした。
「家のことも、寺のこともなーんにも心配いらんよ。死んだ先のことも心配いらんよ。ご本尊に任せていれば、なんにも心配いらんから…」って、口に言葉が出ていました。夏以降、どんどん弱っていく母を見舞いつつ、どこかで、後生の安楽を言ってやれればと思っていましたが、あの夜、自然にそのことが口をついて出たのでした。母にはしっかりと通じていたと思います。「また15日に来るから、元気でいてね」と言って別れました。
13日早朝に吉野に戻った私は吉野に着いた直後に、「急変したから帰ってきて…」と家人から電話を受け、その30分後には母の死を知らされました。
吉野からとんぼ返りで綾部に着いた時には、母はすでに病院から自宅に戻っていました。布団に寝かされた母に出会ったとき、母がキラキラと光りに包まれているように感じました。いろいろあったけど、最後は神仏に祝福をされている、そんな母の姿でした。
13,14日は自宅に置きました。1月の入院以来、久しぶりの我が家でした。私が自宅にほとんどいないので、帰りたかったはずの母をとうとう一度も帰宅をさせることができなかった不義を謝りました。13日は私が、14日は弟が側で寝て、最後の自宅の夜を過ごしました。
15日お通夜、16日葬儀は葬儀会館で営みました。思いもよらないほど、たくさんの方々に送っていただき、母はとても幸せそうでした。いいお葬式をさせていただけたと思います。みなさん、ありがとう。母にも有り難うといいたいと思います。
考えてみれば母は1月の段階で死んでいたのかも知れません。現代医療のお蔭で命を長らえたのは間違いありませんが、そのことで現代社会が抱えている延命の問題やターミナルケアの問題にも自分の問題として直面しました。そして、1月には泣いてばかりいた私に、徐々に大きな覚悟も与えてくれました。またそれまであまり知らなかった母の生い立ちを聞く時間も与えていただきました。ほんとにたくさんの学びをこの9ヶ月で母は与えてくれたように思います。いや、今まで母のことや家庭のことを見向きもしなかった戒めさえ母は教えてくれました。
この9ヶ月、家に帰れば毎日、病院に通いました。それは母が私に親孝行のまねごとをさせてくれた時間だったのではと、今は思えてなりません。私を待って待っていてくれた母でしたが、私にとって、とてもとても大事な時間を母は最後にくれたのでした。
通夜の夜・・・、お導師にお願いして、通夜法話の代わりに、少しみなさんにお話をさせていただきました。母への感謝と、いわば弔辞と、それから別れの挨拶でした。いずれ別の機会に紹介できたらと思います。ともかく今日は、13日以来ネットを休んでいた、復帰代わりのご報告とさせていただきます。
お見舞いやご弔意をいただいた多くの方に感謝申し上げます。
今日から金峯山寺では伝法潅頂会。5年ぶりの執行となります。千人結縁潅頂会も合わせて行いますので、月末までめいっぱいの日が続きます。忌中の身ながら、母の菩提のためにも、心を尽くして、勤めたいと思います。

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