河瀨直美監督の最新作「塵」を観て・・・
河瀨直美監督の最新作「塵」を観て・・・
カンヌ映画祭グランプリ監督である河瀨直美さんの最新作「塵」を昨日應典院シアターで観た。
河瀨さんとは最近親しくしていただいていて、トークショーで共演したり、昨年の九月には彼女が制作した「311ア・センスオブ・ホームフィルムズ」の上映会を蔵王堂で開催させていただいたりと、親交が深い。
今回の「塵」は彼女の養母河瀨宇乃さんの最晩年‥そしてお見送りの映画であった。河瀨作品に詳しい人は、宇乃さんのことはよく知っておられるので、わが母を見送るような気持ちでご覧になった方も多いと思う。実際、ロカルノ国際映画祭でワールドプレミアムとして上映されたときも、たくさんのスイス人の観客が、自分の母を思い出して泣くのをみて、母に対する想いは世界共通なんだなと改めて思ったと、上映会後に河瀨監督から聞いた。全編がお日様のにおいがずーーっとするような温かくて、そして懐かしいそんな作品であった。
私も母を昨年十月になくし、ちょうど一周忌を迎えようとしている。私の母は奈良市出身で、丹波綾部に嫁いで五十年を越えてもなお、生涯大和なまりが取れなかった。宇乃さんも大和なまりの奈良弁で、自分のことを「わて」と言っておられたが、その声を聞いて、思わず母と宇乃さんが二重写しになっていた。
母が病に倒れて十ヶ月。病院での闘病生活が続いたが、いくたびに「ご飯食べてるか?」と私のことを気遣ったくれていた。母にとって子どもは、いつまでたっても幼いときの子どもなのである。そんな母が本当に愛しくてせつないと、闘病生活に付き添う中で、しみじみと感じさせてもらった。「塵」の中の宇乃さんもまた河瀨さんのことを同じようなまなざしで見ているシーンが何度も出てきて、そのたびに目頭を熱くしていた。
「ありがとう」って映画の中で、河瀨監督に語った宇乃さんの声は、母が病室で、なんども私に語った声と同じだった。一周忌を前に、母にもう一度あったような、そんな気持ちにしてもらった映画だった。
母にありがとう、である。そして宇乃さんと河瀨監督にありがとう、である。
*写真は河瀨監督の公式サイトからお借りしました。
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