青の吉野山、青の蔵王権現
観桜シーズンも終わりを告げて、吉野山はいよいよ新緑の時候を迎えました。
私はこの時期の、吉野山が一年中で一番素敵だと思っています。
とりわけ、昨年からは、新緑の頃にも、蔵王堂の秘仏蔵王権現様がご開帳され、「青の蔵王権現、青の吉野山」という佇まいが、聖なる空間を演出していただいています。
前回号に引き続きフリーペーパー誌「やまとびと5月号」に拙稿を認めました。ご笑覧に預かれれば幸いです。「青の吉野山、青の蔵王権現」・・・・私なりに渾身入魂の一文です。
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「青の吉野山、青の蔵王権現」
吉野といえば日本一の桜の名勝。 「一度は行ってみたいものです…」などと言われる。もちろん桜花爛漫の吉野山の絶景は素晴らしい。
しかし、桜が散って新緑の時期を迎え、心地よい五月の風が渡る吉野山が、私は一年中で一番好きである。
新緑なのだから、正確には「緑」なのだが、私にとってはこの時期の吉野山のイメージは青、である。朝靄の中、あるいは暮れなずむの夕闇のひととき、一瞬、新緑の全山が薄青色に染まり、修験の聖地にふさわしい佇まいを見せてくれるのだ。
第一、桜の時期と違って、山には人の姿がまばらである。桜の頃の喧噪がまるで夢だったかように、しーんと静まりかえる町並みには、俗世から抜け出たような爽やかな時間が流れている。
今年のこの五月、吉野山のシンボル金峯山寺蔵王堂で、秘仏本尊金剛蔵王権現の特別ご開帳が行われている(*)。
蔵王堂の秘仏本尊はお肌の色が普通ではない。鮮やかな青黒色である。何年か前に放送されたNHK仏像ベスト10で、「色の鮮やかな仏第1位」にも選ばれたことがあるほど、その鮮やかな青黒色は、拝む人の心を奪ってはなさない。青の吉野山と、青の蔵王権現…。まさに新緑の季節にこそ、ベストマッチな風景と言えるであろう。
加えて、蔵王権現の青は、ただの青ではない。深い意味がある。「青黒は慈悲を表す」と仏典に記されるとおり、お肌の色に、仏の慈悲が示されている。
お参りされた方はご存じだと思うが、蔵王権現は怒髪天をつくばかりの、忿怒の形相をなさっている。それは悪魔降伏の姿なのだが、ただし、単に怖いというだけではなく、仏の慈悲で人々を救い導く、大きな願いを持った怒りの現れなのだ。内なる悪魔を封じ、外なる悪魔を破る力、とも言えようか。
親が子を叱る。叱って導く。その怒りは常に深い親の愛、親の心を奥に秘めているが、そういう親の情愛のような、慈悲の怒りを青黒は表している。
新緑から深緑へと移ろい行く季節の中で、一度、青い吉野に訪れてみてはどうだろう。青の慈悲に癒やされ、心が清らかになること、請け合いである。
(*)蔵王堂秘仏本尊特別ご開帳は三月三十日から六月九日まで開催中。
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ところで、「一個人」と「ならら」に引き続き、今回の「やまとびと」を含めて、まるで二度あることは三度あるってばかりに、このところ、担当した雑誌社や編集者と揉めています。誠意を持って、事に当たっているのに、運気がさがっているのか、人徳がないのか・・どうなのでしょうねえ。
今期の新緑キャンペーンは昨年のような、JR東海による大々的な広報がないだけに、自分でこまめに渉外活動をやるしかないので、いろんな雑誌やメディアへの寄稿を積極的にこなして来たのですが、うーーーん、残念(>_<)
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コメント
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創刊号から購読している「やまとびと」なんですが…今号は山人先生のページ以外は「気持ち悪い…」。…熱烈な新撰組ファンの若造には、山人先生の連載以外ほぼ全部「天誅組!」の誌面構成は狂気の沙汰。まるで朝○新聞か○旗です。
若造の生地では、尾張徳川家が真っ先に薩長クーデター軍に寝返り、それを見て憤った熱田社家・尾張国造家一門が士道の側に立って戦うという…メチャクチャな様相を呈していましたが…。
「義」って、何なんだろうか…と深く考えさせられる今日この頃です。
投稿: 高野の若造 | 2013年4月24日 (水) 06時42分