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権現さまが好き!

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◎今月の蔵王清風(金峯山時報連載中の山人随筆コラム欄)

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「権現さまが好き!」
...
「東大寺の大仏様はとても大きくて、とても素晴らしい。でも大仏様はお側に近寄っても、その眼の先はいつも遠いところを見ておられる。それは大仏様が国家安穏、風雨順時という大きな願いで、この國全体を見守っておられるから」っていう法話をよくする。続きがある。

「それに比べて、蔵王権現様はその前に座ると、その座った人の心の中を見透かすように、カッと見開いた眼で、まるでのぞき込むように前屈みになって、私達に近づいておいでになる。大仏様も権現様もどちらも有り難いが、私は自分のことをじっーと見つめていただく権現様が大好きだ」とお話しする。

この三月末から六月九日まで、仁王門修理勧進の蔵王堂秘仏ご本尊の第三期ご開帳が始まっている。ご本尊の前に、額づくたびに、いつも、自分の心の中が見透かされているようで、有り難いし、怖いし、嬉しくなる。蔵王堂内陣には期間中、発露の間が設けられているが、まさに参拝者ひとりひとりが権現様に自分の心を発露する空間である。きっと座った誰もが、有り難くて、怖くて、嬉しくなっておられると確信している。

四月末からは、週末ごとの夜間拝観も始まっている。夜の権現様はまたまた昼間とは違うお顔をお見せになり、大迫力となる。ご宝前の導師席に佇み、闇夜に響く梵唄声明の流れる中で、権現様のお顔を見上げると、時には涙が止まらなくなるときがある。あるいはすでに亡なった父や母に見守られているような温かい気持ちになる。前の猊下に教えられた「ご本尊に嫌われるなよ!」っいう言葉を権現様から直接頂戴したような気持ちになる時もある。

蔵王一仏信仰というが、あまり難しく考えることはいらない。権現様をいかに自分が好きであるか、権現様からいかに好かれているか、そこを問えばよいのだと思う。ご開帳はじかにそういうことを感じさせていただく有り難い機会なのである。本宗宗徒のみなさまこそ、ともにそうあっていただきたいと念ずる次第…。 
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