自著①『吉野薫風抄ー修験道に思う』
自著紹介①
私の文章が載った書籍の紹介を終えましたが、自分の自著の紹介を引き続いて行います。共著も入れて、計4冊。
まずは処女作の『吉野薫風抄―修験道に想う』出版社: 白馬社; 新装版 (2005/05)
本書は平成4年10月に金峯山時報社から、自費出版にちかい形で2000冊出版しました。その後完売したので、平成17年に白馬社から復刻版が出ました。
25歳から34歳くらいまで、金峯山時報のコラム「蔵王清風」の欄に書いたエッセイをまとめたもの。「蔵王清風」は今も連載を続けています。あの頃は一文を書くのにずいぶん悩んで時間を掛けて書いていました。最近はあとがきのような軽い文章が多いですが、若い頃は熱かったと、読み返して、少し照れます。まあ若書きの渾身の一冊かも知れません。
復刻版に書いていただいた盟友正木晃先生の推薦文を転記します。
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正木晃先生推薦文
空海によれば、「文の起り必ず由有り」という。人が文章を書くのには、必ず理由があるという意味だ。また、「人感ずるときは筆を含む」ともいう。つまり人間はなにかに感動すると、文章を書きたくなるものらしい。
かくして誕生した第一作には、その作家のすべてがある。文学の領域では、よくこういわれる。たしかに大作家の第一作を読むと、技術の巧拙は別として、その人の特徴があますところなく、あらわれている。
宗教の領域でも、同じことがいえる。宗教家の著述は、その第一作において、その人物の宗教人生がもっとも端的に予見されている。空海の『三教指帰』がそうであり、最澄の『願文』がそうである。
田中利典師の第一作『吉野薫風抄』もまた、そういう意味で、師の宗教人生を予見している。おそらく田中師はこれから多くの著作もって、みずからの宗教人生を世に問うだろうが、そのほとんどは、ここに語られている主題を、時と場所に応じて自在に織り変える、いわば変奏曲になると私は想像する。
いや、著作がどうのこうなどは、小さな問題にすぎない。むしろ、田中師の宗教人生そのものが、『吉野薫風抄』に書かれた主題を、まさに身をもって実践することになるにちがいない。それほど、ここに書かれた主題は重い。いつの日か実践されたとき、日本の宗教界を一変させるほどの力を秘めている。
なぜかといえば、ここには日本における伝統仏教の真の姿が語られているからだ。田中師によれば、特定の祖師をもつ特定の宗派が、特定の教義にもとづいて、日本仏教を築きあげてきたなどというのは、まことしやかな虚構にすぎない。純粋な仏教というのも、近代化以降の学者や知識人が勝手につくりあげた幻想にすぎない。私もまったく同感である。
では問おう。日本における伝統仏教の真の姿とは、いったい何か。それは、神も仏もわけへだてなく崇め、しかもその神や仏を自然の中に見出すという信仰のあり方だった。
再び問おう。神も仏もわけへだてなく崇め、しかもその神や仏を自然の中に見出すという信仰のあり方とは、具体的には何を指しているのか。その答えは、修験道である。すなわち、修験道こそ、伝統仏教の真の姿にほかならないのだ。
疑問を抱く方のために、この事実を証明する数字をあげよう。明治初年の廃仏毀釈や修験道廃止令にともない、職を失った修験者・山伏は、いったい何人いたか。その答えは、なんと十七万。僧侶の数が総計で二十二万という現代仏教の状況からすれば、想像を絶する数字というしかない。それくらい、修験道は日本の庶民大衆にとって重要だった。まさにかけがえのない存在だったのだ。
したがって、もし日本の伝統仏教を再興するというならば、それはまずもって修験道の再興でなければならない。そして最近よく耳にするように、もし伝統文化の再興が、未曾有の危機にある二十一世紀の日本を救う道となるというのであれば、修験道の再興こそ、その最も確かな方途である。
『吉野薫風抄』をひもとけば、そこには修験道を再興しようという烈々たる想いがある。実に純で、まったく斜にかまえていない。その心意気はまことに素晴らしい。若書きゆえの直截な表現も激越な言葉も、田中師の宗教人生を予見していることに気付けば、十分に納得できる。読むほどに、修験道がんばれ!田中利典がんばれ!と叫びたくなる。
本書が十余年の星霜をへて復刊されたことを、日本の未来のために、喜びたい。
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めちゃめちゃ、褒めていただいている推薦文だが、正直、とても嬉しかったねえ。
照れながら転記しました。
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