河瀨さんとは「美しき日本」の吉野山金峯山寺編 http://nara.utsukushiki-nippon.jp/contents/02/ での取材でご一緒してから、もうずっとご一緒する機会が多く、親しくしている。とてもチャーミングで、賢い女性である。
東日本大震災をきっかけに制作された「ア・センスオブ・ホーム・フィルムズ」世界最初の上映会を蔵王堂で開催して、そのときと、なら国際映画祭の上映会、そして3.11のちょうど一年後に行われた三重県立図書情報館での上映会と、都合、三度も一緒に「ア・センスオブ・ホーム・フィルムズ」に関わるトークショーを行ったし、私の主催する紀伊山地三霊場会議フォーラムでは2度ゲストとして出演していただいた。...
そのほかにも何度か個人的にもご一緒している。彼女がDJをつとめるFM放送にもゲスト出演をしたことさえある。
そんな親しくさせていただいている彼女の最新作品が「2つ目の窓」である。昨日から上映されていて、今日は西大和のイオンシネマで、河瀨監督と主演のお二人による舞台挨拶を含めた上映会があり、朝から行ってきたのである。
いままで河瀨監督の映画を全部みたわけではないので、私は相対的な感想は言えないが、今までの作品とはちょっと違う感じがした。
僕は河瀨作品の中に流れる、彼女の自分の生に対するルサンチマンが、奈良という土地を舞台に繰り広げられるところに、彼女のもつ世界が認めた芸術性と特殊性を感じている。
今回の作品はその奈良を離れて、彼女のルーツという奄美大島に舞台を移し、二人の若い男女をとりまくいろんなものを通して、河瀨さん自身が、自分の命の繋がりという人間の永遠のテーマとも言えるそのことに果敢になにかを伝えようとされたのだと思う。そういう意味では、今までは奈良という土地の持つ元々のルサンチマンと、彼女のルサンチマンが映像の中で、フィットしたところに彼女の醸し出す世界の妙があったように思うが、今回は少し違っていた。奄美は彼女にとって、すごい憧れの地だったのではないだろうか、いやわかりやすくいうと、彼女の情念ともいえる、ある種のルサンチマンがいつもより足りないのではないかと私は感じた。
だから、逆に、奄美の海の美しさを含めて、私にはいつもより見やすかったし…山羊のシーンは除く…(^_^;)、…好演する二人の若者にとても好感を持つことができた。最後の海の映像も秀逸で、難しく考えることなく、すなおに感動できた。
ただいつも彼女の映画はどこか未解決である。そして今回はいつも以上に未解決である。そこの評価はきっと人によって分かれるのだろうと感じた。
みなさん、この夏、是非映画館に行って、その眼で一度、確かめてください。
あえていえば、個人的には一つだけ残念だったことがある。それは突き抜けるような青い青い空の下の奄美が、一度も映されることがなかったことである。いつもどんよりとして重い雲がのしかかるような、あるいは台風襲来直前のような荒ぶる空ばかりが続いている印象が残った。そこが彼女のルサンチマンなのかもしれない・・・。
生涯最高の作品だったと思うが、まだまだ生涯最高は続くと思う。
追伸 河瀨さん、違っていたら、ごめんなさい。あくまでの、私の個人的な感想です。
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