「菩薩のこころ」
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相変わらず、夜中が寝られない。昨夜は9時半に床についたが、やはり先ほど眼が醒めた。それで、ネれないので、プチ著述集をアップする。今夜はちょっと私的な思いのある文章である。
実は昨日の昼間、長年、おつきあいをいただいた先輩行者さまが蔵王堂を参拝された。私とは45年くらいのおつきあいとなる。つい、この春までは元気にご一緒していたのに、密かに病気が進行していて、気がつかれたときには手遅れといえるほど、病魔に犯されていたのである。でも、どうしてももう一度、吉野に参拝したいというお気持ちで、その意に添って、娘さんがストレッチャー寝台車を手配され、介護車に乗って上山されたのだった。
6月に2度、お見舞いにいったが、そのときには、まだ病室でなんとか会話も出来た。でも今回はもう会話は出来なかった。でも私の言葉に眼で答え、指をしっかり握っていただいたのが、どうにもせつなくて、たまらなかった。
蔵王堂内では山内のみんなで、ご法楽のお勤めを一緒にした。本尊様の御宝前で、ストレッチャーの上に横たわったままだったが、行者さんのまわりで、いままでお世話になってきた学僧や、山内僧侶が法螺やお経をともに唱えたのだった。
話はここからである。ご法楽を終えて、みなから少し離れたところで、娘さんから私だけに話があった。「総長さんですね。いつも母が総長さんが書かれた機関誌の文章を切り抜いては大事に持ってカバンに入れていたんですよ・・・」と、ビニール袋に、大事そうに覆われた拙著の随筆の切り抜きをみせていただいたのである。それをみて私は涙が止まらなかった。
今夜は元気になってもらいたいと思いをこめて、その文章をアップする。
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「菩薩のこころ」
修験道は開祖役行者以来の菩薩集団である。役行者は神変大菩薩と称されたが、その末徒たる我々修験の徒はすべからく菩薩行を行じる者でなくてはならない。
さて、菩薩の教えというものは世界共通なのだと思う。そう思ったのは、かの修道女の聖者マザーテレサが残したある言葉に出会ったときだった。キリスト教も仏教も修験道も、聖者の目指すところ、願うところは同じなんだと心に響いたのである。
その言葉を少々長いが以下引用する。
◇
人は不合理、非論理、利己的です。
気にすることなく、人を愛しなさい。
あなたが善を行うと、利己的な目的で
それをしたと言われるでしょう。
気にすることなく、善を行いなさい。
目的を達しようとするとき、
邪魔立てする人に出会うでしょう。
気にすることなく、やり遂げなさい。
善い行いをしても、
おそらく次の日には忘れられるでしょう
気にすることなくし善を行い続けなさい。
あなたの正直さと誠実さとが、
あなたを傷つけるでしょう。
気にすることなく
正直で誠実であり続けないさい。
助けた相手から
恩知らずの仕打ちを受けるでしょう。
気にすることなく助け続けなさい。
あなたの中の最良のものを
世に与え続けなさい。
けり返されるかもしれません。
気にすることなく、
最良のものを与え続けなさい。
気にすることなく、
最良のものを与え続けなさい…。 (マザーテレサ)
大乗仏教における善とは「上求菩提下化衆生」に叶う生き方をすることであり、それに叶わない生き方が悪であるとされる。「上求菩提下化衆生」とはいわゆる菩薩行のこと。
人生にはいろんなことがあり、いろんな障害や、いろんな人間に会うが、その都度、自分の生き方を菩薩行に問うて、考えたいと、改めで、マザーテレサの言葉に思った。
マザーテレサは死後も、いろいろ批評がある。賛否両論があるが、それらのことを踏まえるからこそ「あなたが善を行うと、利己的な目的でそれをしたと言われるでしょう。気にすることなく、善を行いなさい・・・」と言い放つマザーの言葉は、更に私の胸を打った。評価は後世に託すので、いいのだと思う。
ー金峯山時報平成25年8月号掲載拙著「蔵王清風・菩薩のこころ」から
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行者さんは、なぜか、この文章だけをとても大切に持っておられたのである。
長い人生、いろんなことがあったに違いない。それだけに、修験行者の菩薩として生きて来た自負として、私の文章を肌身離さず持っていただいていたのかもしれない。
もう前のように元気で、頻繁に上山していただくことは叶わないかも知れないが、少しでも元気になっていただきたいと、心より願ったのであった。
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