「葬式仏教をぶっとばせ!」
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「葬式仏教をぶっとばせ!」
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私は今、檀家制度が家庭や共同体社会の中で果たしてきた役割の大きさを見直すことの重要性を強く感じている。大変革という大きなうねりの中に檀家制度も変容を遂げつつあるとはいえ、今ならまだ余力もあり、自らの手で作り変えていく能力も残されているはずである。
消し去られてしまったものを復活させることは難しいが、今あるものを立て直すことはそれより遙かに容易である。今ならまだ大いに間に合うであろう。
第2分科会での井上氏の報告にあったように、檀家制度と会員制を共存させながら、寺院の運営を行っている僧侶の活動はすでに全国ではじまっている。これからもっともっといろんな活動が、ユニークな寺院が出てくるだろう。僧侶という生き方、寺院というフィールドを十分に使って、是非仏教原理の体現をしてもらいたいものである。共に行じたい。それが日本を救う道に通じるはずだ。
仏教を元気にしようとは僧侶自らが元気になることであり、さらには日本の社会全体が元気を取り戻すことである。それが新しい、ニュー・ブディズムとでも形容できるような「次世代の葬式仏教」の姿なのではないだろうか。
ー『葬式仏教は死なない 青年僧が描くニュー・ブッディズム』(白馬社刊・2004年刊)より
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上記の文章は2003年、京都で行った全日本仏教青年会全国大会「葬式仏教をぶっとばせ!」で開催された大会記録をまとめた、『葬式仏教は死なない 青年僧が描くニュー・ブッディズム』(http://hakubasha.co.jp/?p=133)の、まとめに書いた拙稿である。
あれから10年余。葬式仏教・葬祭仏教を取り巻く環境は激変の一途である。隔世の感さえある。 2003年の全日仏青全国大会は、約7年にわたって副理事長職をつとめた私なりの、全日仏青活動の集大成と位置づけた大会であり、実行委員長の人選も含めて、企画運営した。大会のシンポでは講師の選考だけではなく、自らコーディネーターもつとめ、大会記録の編集員までも厚かましくも担当して、最終のまとめ論の執筆もしたのであるが、10年余の星霜を感じる文章である。
あの当時も、葬式仏教をぶっとばせ!とばかり、葬祭・葬式仏教の担い手である僧侶側からもたくさんの取り組みが世の中では展開されていた。そのリーダー的存在は、シンポにも出ていただいて激論を展開された松本市の高橋卓志師であり、あるいは新潟で活躍されていた安穏廟の小川英爾師たちだった。私より少し上の世代の人たちである。私の世代ではイベント寺を発足させた大阪・應典院の秋田さんもいる。
そして10年がたち、ますます葬祭や葬式が取り巻く環境が移ろう中、また新しい世代から、新しい僧侶が生まれている。
釈徹宗さんなどはその代表選手だろうが、それをいよいよ実感したのが、最近詠み終えた『お寺の収支報告書(橋本英樹著・祥伝社新書)』 であった。 彼の言う、檀家制度の打破、離壇の勧めなどは、葬式仏教ではない、祈祷仏教という立場の修験僧を忘れて、時代の流れの速さに立ち尽くす思いでさえある。本書の前では、檀家制度を生かした上での、私が描いた日本仏教の活性化論など、まるで陳腐な年寄りの戯言にさえなってしまっている。しかも葬祭仏教の現場に生きる葬式坊主の立場からの提言であるから、極めて迫力がある。全く以て痛快ともいえる。
ま、じつは細かく読むと、橋本師の意見には全面は同意できないところもあり、私から見れば、禅宗坊主臭さは否めないものの、ここまで書いていいの?っていうくらいのことが、直球で綴られていて、頼もしい。いや、私などは、正直、足下にも及ばないほどである。
ともかく一読をお勧めしたい。僧侶も、一般の方も同様に彼の活動はいろんなことを考えさせてくれるに違いない。
橋本師の属する曹洞宗だけではなく、たぶんどの宗門も、もう10年足らずで、高橋さんや秋田さんや、私達の世代がトップになり、葬祭を巡るいろんな活動が、宗門も是認せざるを得ない時代を迎えるにちがいない。ニュー・ブッディズムと、あえて書いたあの当時の先見性は間違いなかったようにも思う。いや、世の中はその先さえ、見据えなければいけないのだろう。
実に面白いじゃないか!!
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ちなみに『葬式仏教は死なない 青年僧が描くニュー・ブッディズム』(白馬社刊)は、すでに白馬社では腹立つことに、廃棄処分にしたようで、在庫がありません。
しかしながら、金峯山寺ではまだ在庫をストックしていて、蔵王堂で販売をしています。確かに少し内容に10年の星霜は感じますが、全国の寺院へのアンケート調査やひろさちやさんと高橋卓志さんの、激論は、極めて面白いですよ。
ご希望の方は金峯山寺(0746-32-8371)まで・・・・。
投稿: 吉野山人 | 2014年9月 4日 (木) 09時19分