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「蔵王権現信仰の伝播」

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「蔵王権現信仰の伝播」

吉野の権現信仰を中心とする修験信仰は、全国に伝播をいたします。

蔵王権現の話をしましたが、蔵王って皆さん読めるでしょう。本当は“ぞうおう”として読みたいところなんです。ただ山形の蔵王が有名だから、みんな蔵王と読める。蔵王のスキー場のおかげなんですが、この蔵王は、山形の蔵王が本家ではなくて、吉野の蔵王が本家なんです。吉野の蔵王権現さんを山形の刈田嶺神社の別当寺として勧請した、招いた。そこから山形、福島にまたがるあの地域に権現信仰が広がって、刈田嶺という山の名前さえ蔵王という名前に変わっていくほど広がっていった。大体物事は本家よりも分家のほうが有名になるんですが、この象徴が蔵王であります。

花笠音頭、あの祭に出てくる花の笠がありますね。あの花は何かわかりますか。あの花は山桜なんです。山桜が蔵王権現の御神木だから、花笠音頭の花は山桜なんです。行ったことはないんですが、花笠祭り、このときの山車の先頭は、蔵王権現が出てきます。写真で見ると確かにおられますね。つまり蔵王権現の祭りなんです。

明治に権現信仰が禁止されて、やはりこの山形からも権現信仰の形がなくなるんですけれども、元々は吉野の修験信仰、蔵王信仰が全国に広がった一つの典型的な証が、この山形の蔵王である。

あるいは中部には金峰山(きんぽうざん)という山が長野県と山梨県の両県にまたがり、日本百名山の一つに掲げられておりますが、この金峰山も金峯山(きんぷせん)から権現さんを持って行ってお祀りしてから、あれは金峰山と呼ぶようになったんです。

ほかにも全国にたくさんあります。熊本にやはり金峰山(きんぼうざん)がある。熊本市の人は皆知っています。熊本市を睥睨するようにある山なんですが、ここも元々は飽田山というところに蔵王権現をお迎えしてから金峰山という名前に変わった。この山はこの3つの峯からなっているんですが、その3つの峯にある中央の土地は吉野という地名で、今もその名前は残っております。全国にこうして広がっていった。その中心は吉野大峯にあったというわけでございます。

ー吉野大峯世界遺産登録10周年記念連続講座in東京世界遺産『吉野大峯』の魅力:演題:日本が日本のままで生きている世界遺産「吉野大峯」(平成26年7月11日 東京SYDホール)講演録より

「奇跡の一枚」

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写真家永坂嘉光先生がお出しになった『空海 千二百年の輝き』(5万円/小学館刊)という大型本の写真集に私も一文を寄せていることは以前に紹介したが、この本では、蔵王堂秘仏ご本尊の写真とともに、奇跡の一枚の写真が掲載されている。

なにが奇跡かというと、実は私は金峯山寺で護摩を修することはあまりない。とりわけ脳天大神龍王院でお護摩を修したのは生涯で5度だけである。

その5度という希有な機会に、永坂先生がたまたまお参りになり、小生の護摩の写真をお撮りになった。その奇跡の護摩写真がこの本には掲載されている。

大型の写真なので、迫力充分であるが、写真はその一部分である。

明日、生涯6度目の、脳天大神での護摩に出向くが、よろしければ、お参りください。
お正月から続いた脳天大神連日護摩、最終日のお護摩となる。

お護摩は午後1時からです。

『山に祈るー峯寺老僧随想録』(山陰中央新報社刊)を読んで・・・

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先日少し書いた『山に祈る―峯寺老僧随想録』の書評が、六大新報の2月25日号に掲載された。ちょっと法量が多すぎたので、200字ほどカットされたが、読み返して、まあ、頑張って書いていると思う。

以下、オリジナルの文章を貼り付けます。

掲載された方が良い仕上がりになってはいますが、よろしければご覧下さい。

****************

 

 『山に祈るー峯寺老僧随想録』(山陰中央新報社刊)を読んで・・・

 

知人を介して、峯寺の名誉住職松浦快芳大僧正が刊行された随筆集『山に祈るー峯寺老僧随想録』(山陰中央新報社刊)の書評を書いてくれないかと申し出があった。小生のような愚禿が、先徳の著書に書評など、おこがましいことだと逡巡していたが、手元に届いた玉稿を読ませて頂いて、私自身、とても大きな教えを得ることが出来た。とても有り難かった。そのお話を書こうと思う。

私の生涯のテーマは「修験道を通してみた近代主義との戦い」である。私は奈良県吉野山にある修験道の根本道場金峯山寺に暮らしているが、修験道は明治初年の神仏分離政策と、そのあとにつづく修験道廃止令によって大法難に遭遇する。金峯山寺も一時期廃寺とされ、また全国にあった修験霊山の多くは解体されて、修験道そのものが廃絶の危機を迎えたのである。

さてこの神仏分離政策、修験道廃止とはいったいなんだったのかを考えると、行き着くところは日本の近代化という背景にぶち当たる。欧米諸国による植民地化が進むアジアにおいて、植民地にされないためにも、その当時の国策として日本は近代化による富国強兵を急がないといけない事情があった。そのためには国民国家への社会機構や習俗の作り替えが急務とされ、その精神的な支柱である国家神道確立に伴う、神仏分離や修験道廃止が必然となった。幸い、日本はアジア諸国でいち早く近代化に成功し、それにより植民地となる難を逃れたのも事実である。

ところで、その近代化がもたらした欧米主義によるグローバリゼーションによって、世界は本当に幸せになったのだろうか。近代社会が人類を幸福に導くという幻想は、そろそろ終わりつつあるのだはないか、という現実に我々はいま直面している。

過度な物質文明社会は人間性を疎外し、理由なき殺人を行う若者や尊属殺人を生み、また文明社会の精緻を集めた原子力発電は、福島原発事故に際して先祖代々受け継いで来た土地を奪われた同胞たちを生んだ。さらに世界に目を向ければ、文明の衝突とも言える、欧米諸国とイスラム世界の絶望的な相克を思うとき、私たち人類の未来に希望の光はあるのだろうかと、立ち尽くす日々である。

翻ってみれば、近代がヨーロッパ社会で生まれて以降、世界はユニバーサル、あるいはグローバルという美名のもとに、一つの価値観で画一化することを目指してきた。ユニバーサルもグローバルも普遍性を持っているという理解なのである。そして現にいまもグローバリゼーションという嵐によって、その土地の文化、その土地の風土が世界中で破壊され続けている。修験道もまた日本の近代化の生け贄とされたのだった。しかしその風土、その土地で生まれたものを大事にすることのほうが、人類や地球にとっては普遍的なことなのではないか、私はそう気づいたのである。それを私は「近代主義との戦い」と呼んでいる。

日本も又、明治以降、近代化の美名のもとに欧米的な価値観を植え付けられてしまったわけだが、いままさに、あらためて自分たちの風土を見つめ直して、その文化を耕していくことが求められていると言っていいだろう。その鍵を握るのは私はグローバルからローカリズムへの転換だと思っている。私にとっての「修験道を通してみた近代との戦い」とは新たなローカリズムへの目覚めという段階までに進んできた。

ところが、実はそれをどう具現化するのか、戦後のグローバル洗脳世代の私にはなかなか難しい課題である。その難問に見事に答えていただいたのが、本書『山に祈る』であった。

峯寺は修験道の開祖役行者の由緒も伝える出雲の国の山間に位置する古刹である。その峯寺に住し、四季折々の移ろいの中で、壇信徒とともに自然に学び、茶道をたしなみ、長年にわたりユースホステルを営み、訪れる若者や、お迎えしたチベットの高僧たちとの交流を楽しむ。そこには愛犬ポチがいて、出雲神話も息づいている。その日々は山あいの風土に溶け込んだ老僧の人柄と、まさにローカリズムを生きることの豊かさを教えてくれる。
本書のあじわいはそこにあると私は感じている。

文中に出る一節がある。
「小坊さんが大きくなっていかっしゃる間には、難儀なこともある。困ったときはね、この山に登って胸を張ってね。大きな息をしてみなはい。」正月の山頂は、風が冷たく身に沁みる。今川おじさんは話に一区切りをつけると、「さあ」と、私の背中をおしてくれて下山の途に就いた・・・・

冒頭から「近代との戦い」などと大仰なことを言ったが、時代はかわり、生活も大きく変化していくといえども、里山や四季の寒暖のなかで、細やかに生きる風景を私達は失ってはいけないと、そう教えていただいたのだった。        (金峯山寺宗務総長 田中利典)

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急告!! 「今年度最終の講演会ー役行者という人」

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「今年度最終の講演会ー役行者という人」

今年度は吉野大峯の世界遺産登録10周年ということで、講演会やフォーラムの類にたくさん呼んでいただきました。その最終の講演会ともなるのか、3月29日(日)に奈良図書情報館で行なわれます「図書館劇場 IX 第6幕「奈良・大和の群像⑥」 での講演です。以下、詳細。

日時:平成27年3月29日(日)13:00-16:00(会場12:00)
会場:奈良県立図書情報館1階交流ホール(奈良市大安寺西1丁目1000番地)
表題:奈良・大和の群像 ~奈良・大和の群像(6)~
内容:千田館長の「奈良・大和の群像⑥」は「称徳天皇--苦悩する女帝」、ゲスト・田中利典氏(金峯山寺修験本宗宗務総長)は「役行者という人」のテーマで講演。あわせてエントランスホールでは「吉野物産市」が開催される。
料金:当日受付で参加料(資料代等、1人)500円をお支払ください。

•講師:田中 利典氏(金峯山寺宗務総長)、千田 稔(当館館長)
•朗読:都築 由美氏(フリーアナウンサー)

*なんとなんと、当日は田中利典著作フェアも開かれます。サインもしますよ!!

・申込受付期間
 2015.01.25(日) 12:00 to 2015.03.29(日) 12:00
・申込方法
 当館Webページ申込みフォーム
 往復はがき
 FAX(0742-34-2777)
 •来館(2F貸出・返却カウンターにて受付)
 電話(0742-34-2111)
※①郵便番号・住所②氏名③連絡先電話番号(FAXでのお申込みの場合は、必ずFAX番号もお書きください。)を記入し、 「図書館劇場IX第6幕申込み」と明記してください。また、往復はがきで申込みの場合は、返信にも送付先の郵便番号、住所、氏名を必ず記入してください。
※1通に付き、2名までのお申込みとします。(2名お申込みの方は、その旨お書き添えください。)

・申込み/お問い合わせ先
〒630-8135 奈良市大安寺西1丁目1000番地
奈良県立図書情報館 「図書館劇場」担当
 TEL 0742-34-2111
 FAX 0742-34-2777

詳しくは 公式ページ→ http://www.library.pref.nara.jp/event/1462

「お帰り」

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私は15の春に金峯山寺の管長さまの下で得度受戒し、実家を出て、比叡山高校にすすんだ。夏休みは吉野の管長さまの自坊でお手伝いに上がった。

その頃、実家に帰ったときだけではなく、比叡山に戻ったとき、吉野に上山したとき、それぞれに「お帰り!」と言っていただいた。

吉野は管長様の奥様、そして比叡山では、私の保証人になっていただいた井深大僧正の奥様だった。

昨年秋に管長さまの奥様が93才で亡くなった。そして昨日は比叡山・滋賀院門跡であった井深観譲大僧正が亡くなり、葬儀が行われた。

早春の光り輝く日差しの下、大僧正を乗せた車が坂本の里を後にする姿を見送りながら、「お帰り!」と言ってもらえる大切な場所をまたひとつ亡くしたような気持ちになり、惜別の哀しみを抱きしめていた。

考えてみれば、大変お世話になったのに、なにほどの恩返しも出来ていないのが正直な気持ちである。それは井深大僧正だけではなく、今までお世話になった両親や恩人、師の数々に対して、いつもそうだったように感じる。

人は恩を受けたそのお返しをほとんど恩人には返さないで生きているのかもしれない。だかからこそ、自分の受けた恩以上に、自分に関わる多くの人に返すことでしか、恩人への恩返しは出来ないのかも知れない。

もちろん世の中には恩知らずな人はたくさんいるし、私自身もひどい目にあったことは数々あるが、自分自身も又、大切な恩人にはなにひとつ返せぬままに生きていることを、改めて自覚させられたお葬儀だった。

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井深大僧正さま。長年にわたり有り難うございました。

きっと今頃は、先に行って待ちくたびれておかれるはずの奥様と、それからうちの管長様夫妻と、極楽浄土の御許で、旧交を温め合っておられるのかも知れません。

みなさんに、よろしくお伝えください。

「修験道はローカリズム」

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「修験道はローカリズム」

仏教というのは今から一千四百年ほど前、正式には西暦五三八年とか五五二年といいますが、六世紀の半ばに正式に日本に伝わってきた。もちろんそれ以前から帰化人によって民間では伝えられてきた教えではありますが、ともかく外国から正式に仏教という宗教が入ってきた。

この外国から入ってきた仏教という宗教は、実はグローバルな宗教なんです。仏教はインドで生まれましたが、インドではもう仏教はほとんど残っていなくて、インド人の1パーセントも仏教徒ではなくなっていますが、そのインドからはじまった仏教は、南に伝わり、北に伝わりしながら、中国、韓国を経て日本、あるいはスリランカ、マレーシア、タイといった東アジアを中心に世界中に広がっていったという、極めてグローバルな教えなんです。ですからイスラム教とキリスト教と並んで仏教は、世界三大宗教といわれます。

そのグローバルな宗教が日本にやってきて神道と融合する。これを「神仏習合」といいますが、そういうことが起り、日本の精神文化の基礎を成すものになっていった。

そして神道は神道で仏教の影響を受け、仏教は仏教で神道の影響を受けながら、まあ当初、崇仏派の蘇我氏と廃仏派の物部氏との戦いがあったとはいえ、少なくとも明治の神仏分離まで、1300年ぐらいは仲良く共存をしてきた。

神仏習合、本地垂迹(ほんじすいじゃく)・・・いろんな考え方を生みながら日本人に定着をしてきたわけです。それで、私のいる金峯山寺というお寺は修験道の聖地にあるお寺なんですけれども、修験道というのはまさにその仏教を父に、神道を母に生まれた、メイド・イン・ジャパンのローカルな宗教なんです。

ー「第5回紀伊山地三霊場会議フォーラム」 2014.10.18 於あべのハルカス
  第1部:基調講演 田中利典 「紀伊山地の聖地性とその魅力」

「林南院の節分会」

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「林南院の節分会」

3日に金峯山寺の節分会を行いました。

8日は自坊林南院の節分会。
午前中は日数心経。午前10時半からです。
節分法話のあと、昼食の接待と行います。

午後1時からは内護摩供。護摩では全員に散杖加持と水晶加持を行います。
今年一年の除災招福をお祈りください。

終わって境内では古札のおたきあげと、ぜんざいの接待があります。

だれでもおいでいただけます。

*ちなみに写真は毎月3日の内護摩供です。

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