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修験道のいま①

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「蓮華奉献入峰」
 ー田中利典著述を振り返る270929

「さーんげさんげ、ろーこんしょうじょう~」と唱えながら大自然を跋渉する修験道の山修行。以前、「やりたかったんだよな、これ!」って呟いた女子大生の参加者*がいた。

ここ十年くらいの間に、修験道の山修行は何度もマスコミに取り上げられ、年々注目を浴びつつあり、一般からの参加希望者も多い。とりわけ今年七月に行った蓮華会・蓮華奉献入峰修行に参加した人の顔ぶれは、現代社会を象徴するようだった。

蓮華会は私のいる金峯山寺の伝統法会で、大和高田市奥田地区の弁天池の蓮の花を、吉野山の蔵王堂をはじめ、大峯の諸神諸仏に献花する行事。奈良県の無形民俗文化財にも指定を受けている。この行事の中で行われる「蔵王堂蛙飛び」は大きな着ぐるみの大青蛙が登場する奇祭としてつとに知られるところである。その蛙飛び行事の翌日八日に、吉野山から大峯山山上ヶ岳まで、山中に蓮華を供えつつ行ずるのが蓮華奉献入峰である。

さて今年の入峰参加者は九十七名。そのうち、宗内の教信徒以外の一般人は約半数。他宗門の僧侶のほか、さまざまな業種の方がいた。団塊の世代も多い。定年退職をして、その記念になにか自分を試したくて参加した人。妻に勧められて来たという人もいた。例の姉歯建築士の耐震偽装問題の後始末に奔走している設計士もいたし、ニート、引きこもり、統合失調症など、心に病を抱える若者も来ていた。慶応大学の現役学生、一部上場の運送会社社長、農家のおやじ、公務員、占い師、鍼灸師、経営コンサルタントなどなど、例年にも増して多彩な顔ぶれだった。

彼らは山修行に一体なにを期待して参加しているのだろうか?あるいは現代人にとって山の修行はどんな意味をもつのだろうか?

修行を終えた参加者がぽつんと呟いた。「歩いている間中、足が痛くて痛くて仕方なく、もうやめよう、もう帰ろうと何度も思いましたが、終わってみると無事に修行し終えたことが有り難くて有り難くて仕方がありません。来年は是非もう少し身体を鍛え直して、みなさんに迷惑を掛けないように参加したいです…」。また別の参加者は「さ~んげさんげ、と掛け念仏を唱えるたびに山の神仏に抱きしめられているような感動を覚えました」といった。

金峯山寺では五月から十月まで毎月一般の人に呼びかけて山修行を行っているが、その中でも七月の修行会は一日十二時間も行ずる厳しい行程である。しかし厳しい修行の方が喜びを感ずる人が多いと私は思っている。

ー田中利典著作集・読売新聞2008.8月掲載「修験道のいま①」より

 

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