« 再掲載「回転焼きと母」・・・今日は母の祥月命日。 | トップページ | 「修験道に学ぶ子育てのありよう①」 »

「文化伝承の破壊の災禍①」

12144758_937078943024762_3366120033

「文化伝承の破壊の災禍①」
 ー田中利典著述を振り返る271014

私の友人で(一緒に本も出しましたけれども)正木晃さんという宗教学者がおいでになります。この正木晃さんが「昭和10年代に生まれた人の子どもの子どもの世代から、大脳病理学的に病んでいる子どもが出来てきている」と、このようにおっしゃっています。

実はこれを言うたびに、私は私の奥さんに怒られています。うちの奥さんは、お父さんとお母さんが昭和10年と昭和14年生まれなのです。ですから、その昭和10年代の生まれた人の子どもがうちの奥さんで、その奥さんが生んだ子どもが…つまり私の子どもですが…まさに私の子どもの世代。その世代から大脳病理学的に病んでいる子どもが生まれているということなのです(だから奥さんに怒られるのです)。

何かと言いますと、昭和10年代というのは、真っ黒に塗りつぶされた教科書で勉強した世代であります。敗戦によってそれまでの価値観が崩壊した時代です。それは、別の意味で言うなら文化伝承が途切れる世代であります。ただ途切れるけれども、その次の世代(つまり妻ですが…)はまだおじいちゃんがいたり、おばあちゃんがいたり、文化伝承が続いているのですが、その次の世代となると、もう本当に文化伝承が途切れてしまって不具合が起こる。

なにが不具合かというと、文化伝承が壊れると学びの場をなくすのです。子どもというのは、小さいときに多くのことをたくさんたくさん多くの人の中から、学ばなければいけないそうであります。それが、文化伝承が壊れることによって、親からも、おじいちゃん、おばあちゃんからも、共同体社会の中から教わる機会が失われるから、未熟なまま育っていく…。

この話はいろんなところで紹介してきたのですが、最近、正木先生から、もうちょっと正確に言うてほしいと注文がきて、メールで詳しくちょうだいいたしましたので、正確に伝えさせていただきます。

読みますと…「幼少時期、具体的にいうと、1歳から1歳半くらいの時期に母親から豊かな愛情を受けられないと、大脳の前頭前野の部位が健常に発達しないようです。このちょうど目の奥から額の奥にかけての、この裏側に大脳の前頭前野という場所があるそうです。これがものごとの判断をつかさどるところだそうですが、それが健常に発達しないようです。最近の説では、1歳くらいの赤ちゃんは、母親が2人いると認識しているようなのです。つまり、自分においしいおっぱいを飲ませてくれる優しいお母さんと、言うことをきかないときに叱る厳しいお母さんの2人がいると感じているらしいのです。しかし、その後の半年間くらいに母親から豊かな愛情を注がれていくと、その2人が実は1人の人物なのだという認識にいたり、少し難しい言葉を使うと、[人格の統合]ということが起こる。そして、自分の母親を正しく認識して、そこから、この世には自分と自分以外の者がいるという真理に目覚めるというのです。これを難しく言うと、[他者の認識]といいます。

このようなぐあいに、まず、最初に母親を認識し、次に父親を認識し、さらに兄弟・姉妹がいれば、それを認識する。だんだんと地域の人々を認識し、次には、人間の集団である社会というものを正しく認識して、そこに生きるすべを身に付けていくのです。以上は単なる精神論ではありません。繰り返しになりますが、人間の発育にまつわる大脳生理学的な問題です。

ですから、最初の時点で失敗をしてしまうと、エゴしかない人間になりかねません。最初の時点で失敗してしまうことを、[不可逆的]といって、後になって取り戻そうとしても非常に難しいのです。何しろ、人間の発育にかかわる領域ですから。最近のすぐにキレる子どもや若者を見ていると、どうもこの最初の時点がうまくいっていない気がしてなりません。子どもを生んですぐに外に働きに出たり、他人に預けたりして、自分の子どもに十分な愛情を注いでいない母親が増えてしまって、その結果、キレる子どもや若者が急増してしまったのではないか。そのように思えてならないのです。日本の伝統では[三つ子の魂百まで]と申します。これは全く正しい認識です。昔の日本人は豊富な経験の蓄積から三つ子の魂ということを繰り返し伝え実践してきたのです…」。

文化伝承というのは、家庭生活の中、社会生活の中でずっと続けられてきたものであります。ここで正木先生が指摘されているのは、実は母親を取り巻く状況が激烈的に変わってきた。ですから、母親の状況が変わってきているから、当然、その母親が愛情を注ぐべき子どもの状況も変わってきている。で、子どもの発育に問題が出てくる。文化伝承が壊れると、そのようなことが起きてしまう、ということを少し注目していただきたいと思います。

 ー母子保健協会全国大会基調講演・田中利典「修験道に学ぶ子育てのありよう」(平成17年11月講演録)より

***************

これも10年前の講演録ですが、今でも腑に落ちるところがありますね。

« 再掲載「回転焼きと母」・・・今日は母の祥月命日。 | トップページ | 「修験道に学ぶ子育てのありよう①」 »

講演」カテゴリの記事

コメント

はい。愛情込めて子育て頑張ります。
比叡山の堂入りが始まって、よく眠れません…離れた父と、般若心経と真言で比叡山に向いて 毎日一緒に祈るようにしています。
父母が近くにいたら、子供のためにもいいですね。
大自然の中で修行なさる方は、私の心の支えです。
りてんさんありがとうございます。寝ます…。おやすみなさい…。

この記事へのコメントは終了しました。

« 再掲載「回転焼きと母」・・・今日は母の祥月命日。 | トップページ | 「修験道に学ぶ子育てのありよう①」 »

本・著作

最近のトラックバック

Twitter

  • Follow me
  • Twitter
    TwitterPowered by 119
2022年4月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ