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「修験道に学ぶ子育てのありよう(終)」

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「修験道に学ぶ子育てのありよう(終)」
 ー田中利典著述を振り返る271017

・・・実のところ、そういった意味では宗教者側もさぼってまいりました。今、何か問題がありましても、お坊さんに意見を求められることはほとんどありません。脳死臓器の問題でも安楽死の問題でも、ヨーロッパ社会では、牧師さんなり、神父さんなり、宗教家がその決定については大きな発言を求められますけれども、日本ではほとんど求められることがありません。それはさきに申し上げたように、社会全体が宗教狩りを行ってきたというひとつの証拠であるとともに、お坊さんも難しいことを考えなくてええので、そのほうが楽ですから、だまってきたというところもあります。だから坊さんや神主さん自身も大いに考えなければいけません。

しかしそれはそれとして、やはり社会全体ももうちょっと日本の宗教について考えてみるべきときがきているような気がしています。宗教教育を抜きにして、教育、人間の子育てというのは存在しないのであります。少なくとも、日本以外の国でそのようなことをやっている国はどこにもないというところから、考えるべきときがきているのではないでしょうか。

私は決して子育ての専門家ではありません。最初に申し上げましたように4人の子どももろくに育てたことがない。正直に言いますと私は、未だかつて子どものおしめを一度も替えたこともないろくでなしの父親であります。本当に何もしていないという親でございますが、家にいるときはお風呂だけは入れます。お風呂は自分で入れたほうが楽なのであります。風呂から出して服を着せるのは大変でして、1回だけ受け取る方をやってえらい目にあい、それからお風呂だけは自分で入れるのです。

ま、それでも単身赴任中なので月に5日しか家にいませんから、5回しか入れないわけで…。自分の子どもに対してもそうなのですし、ましてこれだけ世の中が激的に変わって来ている中、どうのようにして子どもを育てていけばよいかなどといったことは、実は私の知ったこっちゃない・・・というか力量をこえたことで、到底言えることではないのであります。しかし、先ほど申し上げました、日本人が持ってきた深い自然とのかかわりで培ってきた心情、島原の子守唄、五木の子守唄が何となく情緒として残っていくような母と子の関係のようなものを大事にしなければいけないということは思うわけであります。

それから、修験道は多神教の宗教である。神も仏も一緒に拝んできた。常に神と仏をそばにおいてきた。これは大事なことなのであります。神も仏も遠ざけ、神も仏もないのだというようなことは、決して人間を正しく成長させていかないのではないでしょう。

日本という国は不思議な国で、もう少し南にあると南方系の文化になっていたそうであります。もうちょっと北にあると北方系の文化になっていた。ちょうど南と北がほどよい位置にあって、南方系の文化・北方系の文化が等しく存在して、いいバランスである。

それから、南からも文化が入ってまいります。北からも文化が入ってまいります。中国や朝鮮など大陸からも文化が入ってきます。いろいろな文化がこの日本列島に入ってきて、しかも、日本より先は世界でいちばん大きい太平洋しかありません。行くところがないので、日本でいろいろな文化が集積地となって多重にして多様なものが育まれてきた。北方系の文化・南方系の文化、大陸の文化、いろいろな文化が日本の中で混在していて、その一つの象徴として、神も仏も等しく拝むような宗教観、精神文化を生んできたわけであります。

また日本は四季が豊かであります。四季が豊かであるということは、自然からたくさんの恵みをいただきます。自然に対する崇める心、感謝する心、尊ぶ心がこの日本列島の中で長年にわたって培われてきた。さらに世界中には活火山が800個あるそうですが、その800ある活火山のうち1割の、80個が日本列島の下にあるそうです。こんな大きい地球上の、1割の活火山が狭い日本列島の下にあるわけでありますから、そりゃ、しょっちゅう揺れます。地震の災害がある。でも、温泉がわいて恩恵もある。

台風もどんどんやってまいります。自然の脅威と自然の恩恵というのを二つながら感じてきた日本人の感性。これは決して一神教の人たちに卑下するべきものではなくて、日本人が日本人として誇るべきものなのではないでしょうか。少なくとも日本にあるキリスト教の教会も、イスラムの教会も、テロ攻撃をやりあっているのをみたことがありません。多様な文化をもつ日本だから共存できる。このように日本人は何でも受け入れてきた。神でもよい、仏でもよい、そのようなものをそばにおいてきた。先祖に対する感謝、自然に対する感謝、神・仏に対する感謝の心を常にはぐくんできた。

そのような状況の中で文化伝承があったのです。それを2回にわたって断ち切ったところに、実は大きな問題が生じてきたわけですから、そこのところに気がついて、ちょっと違うのではないか、自分たちが捨ててきたものの中にはいいものがたくさんあるのではないかということを、ぜひとも考えていただくようなことになればと願っております。

今回の「健やか親子21全国大会」では、皆さん方は、虐待の問題であるとか、少子化の問題であるとか、いろいろ大きな問題をお抱えになってそれぞれの地域で活躍なさっているのだろうと思いますが、たぶん宗教にかかわる部分がどこの活動でも欠落しているのではないかと推測します。私は特定の宗教の宣伝をしているわけでも何でもありません。修験道だけの宣伝をしているわけではなくて、日本人が神・仏とついこの間まで親しんできたことを、急速に捨ててきたことに問題があるのだなということに気がついていただきたいと思うばかりなのであります。

私は、80歳以上の人によくお願いをいたします。80歳以上の人は、自分が子どものときに、自分のお父さん・お母さん、自分のおじいちゃん・おばあちゃんから受け継いできた明治以前、近代化以前の良いものをたくさんその身に与えられて大きくなったはずであります。そのようなものを、もう息子の代には難しいかもしれませんし、手遅れかもしれませんから、孫の代には是非残してやっていただきたい。このまま死んだら国賊ですよと言うのです。

明治以前まで続いてきたものをなんでもかんでも意味がなかったとしてきたところには大きい問題があるということ。近代化以降のものがそんなに素晴らしいのかどうか。もう一度、考えていただくきっかけに本日のお話をしていただければ思います。具体的なことを申し上げる力は私にはありませんけれども、少なくともそのような視点を持つことから始めるのが大事なのではないかという気がいたしております。

修験道に学ぶとは、近代化以前の文化伝承の見直しである。文化伝承が廃れると、いろいろなところで不具合が起こります。今、大脳病理学的な問題で、子どもの崩壊ということも申し上げましたが、実は子どもを育てている親の代も崩壊したとしかいいようのない事件がたくさん起こっていますが、それは、やはり神・仏もないような価値観を持たされてきたことに大きな問題があった。もっともっと、今まで日本人が神・仏を隔てずにそばにおいてきたことの意義を見出していただければと願う次第であります。

長時間にわたり、ご静聴ありがとうございました。(拍手)

 ー母子保健協会全国大会基調講演・田中利典「修験道に学ぶ子育てのありよう」(平成17年11月講演録)より

************

14日から連載でお届けした10年前の講演録ですが、今日で最終回です。実はこの講演録は後半からアップして、前半を入れると倍の長さです。

前半は主に修験道の解説や、吉野大峯の世界遺産登録のお話で、核心はアップした後半部分の文化伝承の破壊が中心です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

10年前の話ですが、今でも通用するような問題点が浮き彫りになっていて、ここ10年世の中はちっともよくなっていないことを実感しますね。

写真は林南院秋の大祭での火渡りする信者さんとお子さん。小さい頃からこういう体験は貴重だし、大切ですね。

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コメント

私の家(夫の実家は神道です)には神棚もお仏壇もありませんから、せめて、家族でお祈りできる、家族3人の心を寄せられる何かを置きたいなぁと思いました。
明日は、曾祖母、祖母、私たち3人でお出掛けです。
また、これから、神様や仏様と家族で一緒に心を寄せられる経験を、なるべく子供にさせてあげたいです。
りてんさんありがとうございます。

初めまして
たまたま辿り着き三部読み終え感動しております。
2歳の息子がおります、いつの日か林南院の大祭に連れて行こうと思いました。

もっと文化のお話をお聴きしたいです。

ありがとうございました

りょうさま。ありがとうございます。

是非おいでください。毎年11/3と2月節分です。

り拝。

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