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「人生あおによし1⑯・・・父と子/父への思いと子への思い」

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「人生あおによし⑯」
 ~田中利典著述集271119

⑯父と子/父への思いと子への思い

父は若くして在家から宗門に入り、本宗の宗議会議長の重職を5期15年務めました。私が修験僧となり、宗門の実務に携わっているのも全て父によって導かれた道です。先に書きましたように、山上参りは5歳から、奥駈も大学卒業後に父の後を追って体験しました。その導きで、なんとか山伏となれたのでした。その父も13年前の夏、暑い夜に86歳で生涯を閉じました。

私も長男が小学校に入った時、山上ケ岳へ連れて行きました。手を引いて登る道すがら、言い表し得ぬ感慨がありました。父から受け継いだものを息子に伝え受け継ぐ意味の尊さ、ありがたさを感じたのです。その息子も私と同じ龍谷大学を卒業し、少しずつ修験僧の道に導かれています。

大峯山も修験道も、時代に即して形を変えねばならない時代を迎えていますが、親が子に、子がまたその子に伝え続ける伝統と信仰の本質は貫いてほしいものです。

父が心血を注いだ宗門の発展に尽くすことが恩に報いることだと思い、私もこの道に邁進してきました。ただ内側の論理だけを優先する宗門の体質はなかなか急変をなしえない感もあります。また私自身が長く職にある弊害も感じます。来年は私も総長職15年目、父の年数と符合するものもあり、来年迎える還暦を汐(しお)に、宗門の仕事にひと区切りをつけ、父のように人々の悩みに直接寄り添うような宗教者本来の生活に身を置く中で、父から受け継いだこの道の完成を目指していきたいと考えています。

まさに修験の教えにある「山の行より、里の行」を心に置いて、これからの人生を歩み直したいと願っています。

ー本稿は平成27年11月9日から29日まで、朝日新聞奈良総局の「人生あおによし」で連載されたものを加筆転載致しました。

*************

今年の3月末に、私は金峯山寺の総長職を辞しました。今だから言えるのですが、私の離職はすでにこの連載を始める以前から決まっていたことでした。そのための、仕事の引き継ぎは前年から徐々にはじめていて、寺内では承知の事実だったのですが、宗外にはまだ公表していなかったので、本稿で書いたのが最初となりました。

そういう意味では、この「あおによし」の連載のお話を頂いたときには、34年に及ぶ金峯山寺生活の離職に際し、まさに自分史を総括するような、大変有り難い機会となりました。偶然のこととは思えないような、「よく頑張ってきたな」というご本尊からの思し召しを頂いたような、そんな気持ちにさせていただいたのでした。

本稿再編に際し、それも踏まえて、連載当時とは少し文章も書き換えました。宗門改革は現内局に引き継がれ、更に進められると信じています。

*写真はもう50年くらい前、山上参りの帰りに蔵王堂の前で撮った父と私の写真。懐かしいというより、過ぎ越してきた時間に愕然とし、また父との遠い思い出に心が震えます。

*今日は今から、水をかぶって、脳天さんの月例護摩。里の行に専心します。

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コメント

とてもすてきなお写真と、りてんさんのお気持ちが込められた、とてもいいお話で・・・今日もありがとうございます。

「山の行より、里の行」

山の行は理想の生活が行えるけど
里の行は実際の生活を行わないといけないから
大変なのかも。。。

お坊さんも里では一人の人間になるわけだから
その人間が人間を救うっていろいろ理想とは違う事も
あるんでしょうねぇ。。。。

豆しばさん、ありがとうございます。でも凄いどや顔ですね(^_^;)

にゃおさん・・・いろいろあります(>_<)

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