「人生あおによし⑤⑥」
「人生あおによし⑤⑥」
~田中利典著述集271112
⑤大峯奥駈
修験を代表する修行である大峯奥駈修行は、大峯山脈伝いに170キロを跋渉する修行です。役行者以来、山伏修行の中でも、最も尊ばれた修行道です。
吉野・大峯とその地で伝承された修験道の営みを知ることは、神と仏を分け隔てなく拝み、大自然とともに育まれた日本の基層の文化と宗教に触れることであり、大げさに言えばそれは日本人のアイデンティティーを取り戻すことにさえつながると私は思っています。
大峯修行は靡(なびき)と称される山中の拝所を中心に行じられます。靡とは役行者の法力に草木も靡いたという意味があり、修験道にまつわる神仏が出現する地、あるいは霊地とされます。大峯修行成立時には峰中に百以上の拝所が定められていたようですが、徐々に集約されて、中世末には75カ所になりました。奥駈修行とはその大峯七十五靡の一つ一つに祈りを捧げる修行です。
近世以降は吉野山から大峯山上ケ岳へ参詣する山上参りが庶民にも広がりました。そこで、山上ケ岳よりさらに厳しい奥に入る修行が「奥通り」と称され、大峯奥駈修行と呼ばれるようになっていきます。
⑥奥駈の1日(上)
では奥駈の修行が実際にどのようなものかをお話ししましょう。私が行じた奥駈は吉野から熊野本宮まで7泊8の行程日です。
1日目は朝4時、蔵王堂を出立します。水分神社、金峯神社では新客と呼ぶ初参加の人々の行を行い、本格的な山修行になります。11時間24キロの行程を黙々と山上ケ岳へ向けて行じます。途中からは急峻な岩場が続きます。先達の指導に導かるまま、もくもくと行じます。
山上ヶ岳表の行場「西の覗き」は先達の指示に促され、断崖絶壁の岩場からロープで吊される捨て身の修行を課せられます。「親孝行するか」と一喝されて、たいていの人は縮み上がって「はい」と無心に答えます。累々と続く岩を上り下りしてこの日の修行を終える先が山上本堂、大峯山寺です。標高1719メートルの山頂ですが、重要文化財の本堂や寺務所、参籠所などの伽藍が並ぶ別天地です。
ー本稿は平成27年11月9日から29日まで、朝日 新聞奈良総局の「人生あおによし」で連載されたものを転載致しました。
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本稿は新聞掲載原稿と少し違っています。字数の関係で削った部分などを補足しました。
ただ、担当記者の古澤さんにまとめていただいた短い原文の方がいいかもしれませんね。文章力のない私はついつい饒舌になってしまい、かえって文意を損ねているかもしれません (^_^;)
*写真は大峯奥駈修行、小篠の宿での勤行です。
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コメント
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すごい…尊敬…かっこいい…あこがれ…怖そう…私も行きたい…
りてんさんと修行なさった皆様が羨ましいです(><)
今日も一日、少しでも良い一日に…私なりの修行頑張ります。
投稿: 豆しば | 2015年11月12日 (木) 10時34分
7泊あの服装は辛いですね。
リュックは使えどいろいろあるんだろうな~~~。
頭につけているのは転倒の際に頭を守る為と水を汲むのに使えると
聞いて、利にかなっている服装なんだろなーと思いました。
白なのも虫対策か?!
男の人はいろいろ出来てうらやましいです。。。
やっぱり女人禁制なんでしょうね。
修行でしか得られないもの。。。
女子は一生得られないのでしょうか?
女子は出産なのかしらねぇ。。。。。。。
投稿: にゃおちゃん | 2015年11月12日 (木) 23時38分
豆しばさん、ありがとうございます。でも確かに毎日が修行ですからね・・。
投稿: 吉野山人 | 2015年11月13日 (金) 09時00分
にゃおさん。女人禁制の問題は連載の中で出てきますのでお楽しみに・・・。修験道全体が女人禁制ではありませんので。。女性の参加も出来る山修行のありますよ。
投稿: 吉野山人 | 2015年11月13日 (金) 09時02分
修行なんてするとのめり込んでしまいそうです。。。。
女子はここまでーと言われるとナンデーって思ってしまいそうな。
でもコンプレッションタイツ履かないと体が壊れてしまうかも。。。
お守りみたいなもんかもしれませんが。。。
ヒゲも生えて来そうです(笑)。
太陽の光は後光のように
流れる汗は滝のように
手足の震えは御威光のように感じてくるんでしょうねぇ。。。。
って私の情けない想像ですけど。。。。
投稿: にゃおちゃん | 2015年11月14日 (土) 22時51分