「修行は口伝重視」
「修行は口伝重視」
~田中利典著述集271210
奥駈の手順などはもちろん、修験道にはいろいろなしきたり、法具など、密教の流れをくむ教えがあります。それらはすべて先輩たちからの口伝によって受け継がれてきました。いまでは、最低限の心得などはテキスト化していますが、やはり口伝を重視しています。
修験道は、密教の師資相承(師から弟子に口伝えで教えていくこと)の流れをくみ、また、体験主義でもあります。教義書のようなものができる以前に、切り紙という小さな紙に、その境地に達した人へ秘法を伝えた伝統があります。そういう意味で、いまでも口伝を大事にしています。文字だけでわかるように教義書を用意するのではなく、実際に先達たちと山に入って体験的に覚えていくやり方を大切にしているのです。
私自身、いまでこそ講演もすれば、人前でいろいろ話しますが、もともとは法話のようなことはとても苦手でした。しかし大峯奥駈修行中に夜の集会(ミーティング)などで話すときは、ひじょうに話しやすいと感じたものです。それは、みんなが一日、同じ場で体験を共有しているからなのです。共有体験があるところとないところでは、同じように仏教や修験の教えについて語っても、伝わり方がちがいます。
奥駈の夜の集会で「今日も一日、仏様によって歩かせていただいた一日でしたね」と言うと、「そうか、うん、そうだ。自らの力で歩いたと思ったけれど、仏様やいろいろなものたちの力に助けられて歩いた一日だったなあ」と、聞く側もすっと腑に落ちます。それは共有体験があるからこその理解です。そういう、直接伝わっていく、心で理解していくことを修験道では重視しています。
ー拙著『体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)』(2014,5刊)より
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*写真は大峯奥駈修行の峯中・釈迦ケ岳山頂での勤行。
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コメント
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共有体験をして、心で理解する…
なんて素敵な世界なんだろう…(TT)
投稿: 豆しば | 2015年12月10日 (木) 18時26分
奥駈・・確かに足が震える位、
小さい岩も乗り越えられない限界まで
行かないと
道端の仏様に対する心も
わからないでしょうねぇ。。。
投稿: にゃおちゃん | 2015年12月12日 (土) 14時30分