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「蔵王権現の祈り」
~田中利典著述を振り返る280220
蔵王堂のご本尊は普通の仏さんと違って〈蔵王権現〉と呼ばれる、修験道という山伏の宗教独特のご本尊なんです。
役行者という方が祈りだしたと言われるご本尊なんですが、〈悪魔降魔の尊〉、つまり悪魔を〈降伏〉する大変恐ろしいお姿をなさっています。悪魔降伏ですから、悪魔を懲らしめるというお姿の中にはさまざまな意味があるのですけれども、左足でドカッと大地を踏みしめる意味は、大地の揺らぎを鎮めるということなんですね。
昨年の三月一一日に東日本で大きな地震があって、大きな津波がありました。その翌日から私たちは大地の揺らぎを権現さまの足で鎮めていただけるように、何とかこれ以上この日本の大地が揺るがないようにということで、お祈りを続けてるんですね。今も続けてるのですけれども。
震災が起こってから一月ちょっとぐらい経った時に、お勤めを終わって本堂を出ますと、知らない人から声をかけられたんです。
その人は私のことをよく知ってて、東京方面で年に数回講演をしたりするので、その講演においでになったことのある方のようで、
「実は私は東北出身ですが、今回の震災で身内も友人も実家も誰も大きな被害に遭わなかった。それを思った時に誰かにお礼を言いたい、感謝の心を捧げたい、とそういう気持ちになって思わず新幹線に飛び乗っていた。で、気がついたらこの吉野の蔵王堂に来てお参りをしていた。
お参りをしていると、この蔵王堂で東北の震災のこれ以上地震が起こらないように、また亡くなったたくさんの方々の御霊が鎮められるように、というお祈りを毎日していただいてることにたまたま遭遇して、とても感動した。これは帰って実家の東北の人たちに、遠い吉野でも私たちのことをお願いをしていただいてる、お祈りをしていただいてるということを伝えたい」ということをおっしゃっていただいた。
震災については救援活動とかいろんな支援の仕方があると思いますが、我々はまずご本尊に日々お祈りをして、そのお祈りを通じて何か出来ることはないだろうかという気持ちを持っていたのですが、お祈りをすること自体がこんなに人々を力づけることになってるんだ、ということを、その方を通じて教えていただいて、改めて「一生懸命にお祈りをすることの意味」を感じたんですね。
実は日本というのは、金峯山寺だけではなくて日本中のお寺で、例えば東大寺さまでも、春日大社さまでも、大阪ですと四天王寺さまでも、日々〈天下泰平〉〈風雨順次〉それから人々の安穏がずっと願い続けられている、そういうお祈りが続けられた一日が今日という一日なんだ、ということを私たちも自信をもって思わなければいけない。
そういうことが、出会ったその人を通じて、実になるんだとご本尊に教えられたような、そんな気持ちにさせていただいたことがあるんですね。
蔵王堂のご本尊はそれだけではなくて、お顔の色が青黒色という大変鮮やかな色をしておられます。こんなに色鮮やかな仏さまってあまり無いんですよね。顔は大変こわいのですが、その奥には仏さまの慈悲が込められている。そのこわいお姿の奥にある仏さまの慈悲はお肌の色に表れている。
仏教では「青黒は慈悲を表す」といいます。仏さまの慈悲があの青い色。我々はこれを〈恕の心〉と呼んでいます。「女」扁に「口」を書いて「心」。これは「お互いを許し、認め合い、慈しむ」ということなんですね。
権現さまのお姿はただこわいだけではない。悪魔を降伏するような大きな力がある。大地の揺らぎを抑えるような大変な力がある。でもその奥には人々を受けとめて、そして人々の安らぎを慈しんでやろうという、そういう大きな慈悲が感じられるのです。
日々のお勤めを通じて、いろんな出来事があるたびに、我々にとって大事なことは何なのかということをご本尊から教えられるようなことでした。ぜひ、たくさんの方においでいただいて、慈悲の心、お互いを認め、許し合うような、そういう大きな力のあるお祈りを感じていただけたらと思います。
ー『ちょっといい話 第11集―ABCラジオ 各界名士によるこころ洗われるお話』新風書房刊-2013年8月-より
http://www.shimpu.co.jp/bookstore/item/itemreco/1549/
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本稿も一昨日に引き続き、ABCラジオ「ちょっといい話」(12・11・25 放送)に出演したときの話です。実はこのラジオ放送は、一度に2本取りをしました。だいたい、1回8分足らずの収録ですので、2本取りといっても、全部で30分もかかりませんでした。しかも、ぶっつけ本番で一発OKでしたし・・・。
一昨日の記事が2本目の収録で、今日の分が最初の話でした。
「ちょっといい話」という表題ですから、そういうような話を用意してきてほしいと言われて、スタジオ入りしました。果たして、制作者側の期待に応え切れたかどうかは、いささか自信はありませんが、東日本大震災でのお祈りと、この来訪者との話は、当時の私の心に強く残った出来事でしたので、紹介しました。
*写真は金峯山寺所蔵の蔵王権現立像
「志と大きく持ちなさい」
~田中利典著述を振り返る280218
私は15で得度を受けて僧侶になりました。ですから前の管長様には15の時からお仕えしました。あんまりいろんなことを細かくは教えていただかなかったんですが、一番最初に言われたことが「志を大きく持ちなさい」という言葉でした。
で、その後こうしていろんなことをさせていただくようにはなるんですけれども、最初に管長様にそう教えられたことが私の大きな支えになっています。
金峯山寺は平成16年に〈世界文化遺産〉に登録をされましたが、この時も金峯山寺を世界遺産に登録出来ないかということで、ちょうど平成11年の12月25日、…金峯山寺は昔からなぜか12月25日が一山の納会(忘年会)なんですね。
で、この忘年会の日に管長様に「金峯山寺の世界遺産登録の運動を始めたいのですが」と申し上げたら「やってみろ」ということでね。そこから始めるのですけれども、それも「志を大きく仕事をしなさい」っていうことをずっと言われていたので、ほんとはなるかどうか分からないけれどもともかくやってみようということで始めたのでした。まあ、ほんとはなかなかそんなに簡単にいかないはずなんですが、ところが結構簡単にいったんですよ・・・中略・・・
その後、今度は登録が叶っただけではなくてそのことを始まりとして、世界遺産は自然と文化を二つながら保護・保全していこうというのが本来の目的ですから、熊野と高野にお声掛けして「紀伊山地三霊場会議」という、登録資産を持っている者同士の連絡協議会をつくりました。
紀伊山地の三霊場というのは道も登録されていますし、三つの霊場が大変広く、1万3千ヘクタールという日本で一番広大な広がりがあります。その分、いろんなことが起こるじゃないですか。ですからやはり皆で考えていこう、次の世代に伝えられるように、守っていくためには単に文化振興とか、観光振興とかではなくて、守っていくための手立ても考えようという取り組みを始めます。
現在は高野山の松長有慶座主猊下に総裁を務めていただいて、年に一回守るための会議を開催しています。そういう大きな活動を進めて来られたのも、若い頃に管長猊下に「志を大きく持ってお坊さんになりなさい」という教えをいただいたお陰と思っています。
38年間お務めして管長様は先年お亡くなりにはなるのですけれども、今でも管長様の墓前に行くと、自分に「志を大きく行動しているか。これで間違いがないか」と、いつも自問自答しています。ほんとにあまり細かいことはおっしゃらなかったのですが、最初にそういうことを言うていただいたことが、後々の自分をつくっていくのに大きな力になった、と思っています。
大変、私にとってありがたいことですね。そういう意味では単に世界遺産になったことをゴールとせずに、なったことから始めるということで次の世代につなげていく、そういう志を継ぐ人をお寺の中に、あるいは地元の人の中につくっていくことも、管長様の「志を大きく持ちなさい」とお教えていただいたことを、若い人たちにつなげていくことになるのではないかなと思っているところです。
ー『ちょっといい話 第11集―ABCラジオ 各界名士によるこころ洗われるお話』新風書房刊-2013年8月-より
http://www.shimpu.co.jp/bookstore/item/itemreco/1549/
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本稿はABCラジオ「ちょっといい話」(12・12・30 放送)に出演したときの話を、本にした文章です。もう3年以上前になりますね。
同じ話を読売新聞でもしたことがありますが、いわば私の活動の原点となった、師から頂いたお言葉でした。
今も忘れてはいけないと自戒しています。
「PVシリーズ番外②:エフエムあまがさき「8時だヨ!神さま仏さま」
PVシリーズの番外編②として、再度、ラジオの音源を紹介します・・・。
これは釈徹宗さんから依頼を受けて、ゲスト出演したエフエムあまがさき「8時だヨ!神さま仏さま」という番組でした。2年前の2014年の4月2日と翌週の9日に放送されましたが、現在も公式サイトでアップされています。
30分番組で、その中で7割くらいが私とキャスターのみなさんとの会話です。初対面ばかりのみなさんとの会話でしたが、和気藹々とやれました。ちなみに釈さんはおいでになっていません。
長いですから、お時間があるときにお聞き頂ければと思います。
→ http://www.voiceblog.jp/hachiji-aiai/m201404.html
写真は収録時の様子です。
よろしればご感想も一言、お願いします。
「祭のあと・・・そして、誰もいなくなった」
節分の法要を前後して、久しぶりに綾部の田舎寺もしばらくは賑わう日だった。
5日には東京に嫁いだ娘や二人のお弟子さんが午後から来てくれて、宿泊。前日の6日は家内の妹をはじめ大挙お手伝いが集まってくれて、夜の食事会は13名。7日当日には更に増えて、法要を終えた打ち上げには21名の人が席に着いてくれた。
大祭当日は、父が住職をしていた往年の頃のような大祭というわけにはいかないながら(多いときはこんな狭い寺に250名近い人が来てくれていた・・・)、それでもそれなりの人で賑わい、今年も無事節分会法要を行うことが出来た。
そして打ち上げのあとも5名の方が泊まって、今日は朝から片付けをやってくれる。お蔭で昨日たためなかったテントもしまうことができ、境内の清掃も終わって、午後からは一人帰り、二人帰りして、先ほど、最後に娘も夜行バスに乗って、檀那はんの待つ東京へ戻っていった。
そう、そして誰もいなくなったのだ。
「金峯山寺の鬼」ー田中利典著述集280203
鬼にもいろんな鬼があります。辞書によれば、鬼には「恐るべき他界者の意義を中心に、(1)異形醜悪、(2)超人超能力者、(3)邪神、(4)亡者、(5)異族など」(『日本大百科全書』引用)があるといいます。一般には災いをもたらす悪い鬼ばかりを想像しますが、秋田のナマハゲや岩手のスネカのように、時には幸福をもたらす類の、善い鬼もあるのだそうです。
ところで金峯山寺の鬼はどんな鬼か?…というと、ご開祖の役行者に調伏され、後に、役行者の侍者として付き従った、夫婦の鬼です。名前は前鬼・後鬼といいます。
その鬼夫婦が、役行者の弟子となった由来の説話を、今回は絵本にしました。
さて、前作の絵本『蛙とび』では、金峯山寺の伝統行事「蓮華会・蛙飛び行事」の中に出る大青蛙の話を絵本にしましたが、蓮華会に登場する大青蛙の着ぐるみと同じように、もう一つの伝統行事「節分会・鬼火の祭典」では、赤・青(ホントは緑色)・黒の、三色の鬼の着ぐるみが活躍します。考えてみれば金峯山寺は、着ぐるみのよく出てくるお寺です。
この行事の最初、鬼達は堂内狭しと暴れ回り、クライマックスでは、着ぐるみの鬼達に「福は内、鬼も内~」と豆が撒かれ、鬼は降参して平身低頭します。「福は内、鬼も内~」が金峯山寺独特の豆まきなのです。その由来は今回の絵本の主題である、役行者が夫婦の鬼を法力で懲らしめ諭し、改心させた後、弟子としたという説話がもとになっています。
節分の日、全国各地で「鬼は外~」と追いやられた可哀相な鬼達を、「鬼も内~」と蔵王堂に集め、役行者の慈悲で救うというモチーフで、行事は進行するのです。
役行者は単に、人の子どもをさらう悪い鬼を懲らしめただけではなく、慈悲を以て弟子とし、そばに置いて、善い鬼となさしめました。ここに役行者の素晴らしさがあります。
合同編集を担当されたコミニケ出版、そして作画松田大児さんの柔らかい絵で、そこのところがうまく読者に伝えわればと念じてやみません(金峯山寺 田中利典)。
~金峯山寺の絵本シリーズ第三弾「鬼と行者さま」のあとがきより
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今日は節分会。金峯山寺では大護摩供や鬼の調伏式など、多彩な行事が行われます。
とりわけ「福は内、鬼も内~」と行われる豆まきは独特の行事で、全国から追われてきた鬼達を一同にあつめ、行者さまの法力で、改心させるという伝統の儀式が行われます。
そのお話を絵本にして、解説あとがきを書きました。
表紙帯には茂木健一郎さんにコメントをお願いしています。
「早くも!カツヤマサヒコShow・・・YouTube版アップ」
去る1月30日に放映されました、私がゲスト出演しているサンテレビ「カツヤマサヒコShow 第118回」がYouTubeにアップされています。1時間番組ですが、その中、私と勝谷さんとのトークは40分ほどあります。よろしければ是非、視聴ください。
https://www.youtube.com/watch?v=joccS0J2eBM
マシンガントークの勝谷さんに負けじと頑張って喋っていますので。
この番組をきっかけに、他のテレビからのオファーがないかなあ(笑)。。
ご感想もお教えください。
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