「金峯山寺の鬼」ー田中利典著述集280203
「金峯山寺の鬼」ー田中利典著述集280203
鬼にもいろんな鬼があります。辞書によれば、鬼には「恐るべき他界者の意義を中心に、(1)異形醜悪、(2)超人超能力者、(3)邪神、(4)亡者、(5)異族など」(『日本大百科全書』引用)があるといいます。一般には災いをもたらす悪い鬼ばかりを想像しますが、秋田のナマハゲや岩手のスネカのように、時には幸福をもたらす類の、善い鬼もあるのだそうです。
ところで金峯山寺の鬼はどんな鬼か?…というと、ご開祖の役行者に調伏され、後に、役行者の侍者として付き従った、夫婦の鬼です。名前は前鬼・後鬼といいます。
その鬼夫婦が、役行者の弟子となった由来の説話を、今回は絵本にしました。
さて、前作の絵本『蛙とび』では、金峯山寺の伝統行事「蓮華会・蛙飛び行事」の中に出る大青蛙の話を絵本にしましたが、蓮華会に登場する大青蛙の着ぐるみと同じように、もう一つの伝統行事「節分会・鬼火の祭典」では、赤・青(ホントは緑色)・黒の、三色の鬼の着ぐるみが活躍します。考えてみれば金峯山寺は、着ぐるみのよく出てくるお寺です。
この行事の最初、鬼達は堂内狭しと暴れ回り、クライマックスでは、着ぐるみの鬼達に「福は内、鬼も内~」と豆が撒かれ、鬼は降参して平身低頭します。「福は内、鬼も内~」が金峯山寺独特の豆まきなのです。その由来は今回の絵本の主題である、役行者が夫婦の鬼を法力で懲らしめ諭し、改心させた後、弟子としたという説話がもとになっています。
節分の日、全国各地で「鬼は外~」と追いやられた可哀相な鬼達を、「鬼も内~」と蔵王堂に集め、役行者の慈悲で救うというモチーフで、行事は進行するのです。
役行者は単に、人の子どもをさらう悪い鬼を懲らしめただけではなく、慈悲を以て弟子とし、そばに置いて、善い鬼となさしめました。ここに役行者の素晴らしさがあります。
合同編集を担当されたコミニケ出版、そして作画松田大児さんの柔らかい絵で、そこのところがうまく読者に伝えわればと念じてやみません(金峯山寺 田中利典)。
~金峯山寺の絵本シリーズ第三弾「鬼と行者さま」のあとがきより
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今日は節分会。金峯山寺では大護摩供や鬼の調伏式など、多彩な行事が行われます。
とりわけ「福は内、鬼も内~」と行われる豆まきは独特の行事で、全国から追われてきた鬼達を一同にあつめ、行者さまの法力で、改心させるという伝統の儀式が行われます。
そのお話を絵本にして、解説あとがきを書きました。
表紙帯には茂木健一郎さんにコメントをお願いしています。
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