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「山伏のファッション①」 ~田中利典著述集280325

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「山伏のファッション①」 ~田中利典著述集280325

歌舞伎や時代劇などにも特有の装束で登場する山伏。その装いは、いたるところに信仰の象徴(シンボル)的な意味合いが込められています。

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「頭襟(兜巾:ときん)」
山の中でとがった岩や突き出た木の枝から頭を守る、山伏専用の小さなヘルメット。独特な形は、大日如来がかぶっている宝冠を真似たもので、黒い色は煩悩と無明を表し、「聖なる仏も俗なる人も本質は同じ。悟りも煩悩も実は同じところにある」という修験道の教えが込められています。

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「鈴懸(篠懸:すずかけ)」
山伏の法衣は、俗衣の上衣に括袴【ルビ:くぐりばかま】という俗人の衣服です。風通しの良い麻で、色は「柿色」と表現される淡い黄色です。

「鈴懸」という言葉は、「鈴」=仏性を宿らせている私たちの身体、ということに由来します。仏性というのは、生きとし生けるすべての人に、悟りを得て仏になれる種(可能性)が宿るとされる仏教の考え方です。

密教の法具に金剛鈴という鈴があり、儀式では音を立てることで自分自身に眠っている良心を目覚めさせたりすることから、鈴=仏性の象徴という意味で使われています。そして、衣は、仏性を宿らせている身体に懸けるものなので「鈴懸」と呼ばれます。

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「脚袢(きゃはん)」
かつては「胎蔵黒色のはばき」と言われる黒いものを着用していましたが、今は白い脚袢で脛の部分を保護します。

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「結袈裟(ゆいげざ)」
天台宗系の山伏が身に付ける結袈裟は、細長い帯状の布製品で、丸い房(ボンボン)が付いています。丸い房を「梵天」というので、梵天袈裟とも呼ばれます。これに対して、真言宗系の山伏は、房ではなく輪宝【ルビ:りんぽう】といって平たくて丸い輪っかの飾りを付けるのが特徴です。

結袈裟の台の色は、金峯山寺の場合は、僧籍を持っている山伏は白地に金欄付き、僧籍を持っていない山伏は茶地に金欄付き。真言宗系の場合は、ほとんどが茶地に金欄付きです。梵天や輪宝は前に四つ、後ろに二つ付いています。

ー拙著『体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)』(2014,5刊)より

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*写真は熊野本宮大斎原で大護摩供を行ずる鈴懸正装の大峯行者たち。

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