「山の行より里の行」④ー「りてんさんといく拝観講座」
「山の行より里の行」④ー「りてんさんといく拝観講座」
・・・田中利典著述集280726
先週から掲載している田中利典著述集の4回目。最終稿である。中外連載の原稿の、長いバージョン版=元原稿を掲載しています。
よろしければご覧ください。
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「りてんさんといく拝観講座」
本山宗務の第一線から退いて、総長時代とは違う比較的自由な立場でいろんなことに関わっているが、この春、「りてんさんといく金峯山寺拝観講座」を企画した。Facebookやブログなど、SNSでの告知を中心に、二十名限定で募集して、有り難いことに最終二十一名の参加者を得た。
内容は吉野山の宿坊(東南院さん・・・)に宿泊して、修験道講座、宿坊夕座勤行、食事作法付き食事、蔵王堂夜間拝観、夜の交歓親睦会、そして翌日の朝からは蔵王堂勤行、朝食、蔵王堂秘仏拝観案内、本地堂法話会、お別れ昼食会と、午後三時から翌日のお昼過ぎまでびっちりと予定を組んで、ご一緒した。普通の講演会なら、四回分に当たるくらいしゃべったかもしれない。
おおよその参加者の意見は、来て良かったというものであった。「次はいつやりますか?」と催促も受けた。
そんな研修会を主催して感じたのは、自分たちが思う以上に僧侶の世界、お寺の世界に対して一般の方々が興味を持っているのだということだった。「こんなに身近にお坊さんと会うことはないです」と何度も言われたりしたし、「一杯、接したことが嬉しい」と参加者たちに口を揃えて言われたのだった。
逆に言えば、私たち僧侶が思う以上に普段は一般の人々から僧侶が遠ざかってしまっているということだろう。そのこと自体を私たちは深く自覚しなくてはいけない。
四回にわたり本稿で紹介した、地元綾部でのコミュニティラジオの出演も、Amazonの僧侶派遣業の問題も、寺社フェス向源のことも、更には「りてんさんといく拝観研修」も、私にとっては同根から来ている。
宗教から遠ざかった人々に少しでも僧侶自身が寄り添う試みが大切なんだという思いである。
幸い私の周りには「たなかりてんを若い人に近づけようプロジェクト」というような少々堅さをくだいた動きをしてくれる人々もいて、この五月、六月だけでも、地元綾部での講演会や奈良町での法話会を含め、八つほどの催しが企画されている。
初詣に行き、お盆には墓参りをし、神社や教会で結婚式を挙げ、クリスマスも祝い、人生の終焉には大方が僧侶を呼んで葬儀をする…そういう日本人が無宗教であるはずがない。
宗教者側が、もっと積極的に世間に対しいろんなアクセスをする必要があると私は思っているが、思っているだけではだめなので、たくさんの方の力を借りて、まず出来ることから始めることとしたのである。
宗教を取り巻く状況は決してよいとはいえない。政教分離の問題もあるし、オウム真理教事件以降はここ二十年、宗教といえば禁忌される風潮さえ漂ったままである。スキャンダラスに取り上げられる宗教事例ばかりが氾濫して、宗教の持つ良さや尊厳性にあまり目が向けられない現状もある。そこを打破する努力がこれからは一層、問われていくのだと私は思っている。
まさに修験の教えで言う「山の行より里の行」を自分なりに体現しなければならないと思うばかりである。
さてさて、本稿も約束の誌面が尽きた。私に何が出来るのか、もちろんたかがしれてはいるが、最後に、私なりに更なるこの道を進ていくことをお誓いして、筆を置くこととする。徒然なる文章に最後までお付き合いいただき感謝申し上げたい。(了)
ー中外日報の「随想随筆4」(平成28年6月3日掲載)で連載させていだいた文章の元原稿を掲載しました。
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金峯山寺を下山以来、あまり以前ほど原稿依頼もなくなり、FBなどの投稿を除くと、真剣に原稿を書くと言うことがなくなっていたので、今回の連載は久しぶりに、頑張って書いた。
もう少し文章が上手だったらといつもながら自己嫌悪の執筆だったが、まあ、なんとか4回を書き上げたのである。尻すぼみにはなっているのはいつもの癖だということでご寛恕いただきたい。
冒頭に書いたように1行12字の依頼を、1行17字で書き上げたため、最終原稿は元原稿から、約3割を削除した。なんか残念だなあと思っていたので、全文を載せられて、正直、嬉しい・・・。最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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