「修験道ルネサンス」 ~田中利典著述集280811
「修験道ルネサンス」 ~田中利典著述集280811
暑ければ冷房、寒ければ暖房、移動は車や飛行機で、電子レンジに冷蔵庫……便利なもの、体が楽をできるものばかりが増えました。高度な物質文明社会の発展は肉体が楽することばかりを優先する結果、主であるべき精神が肉体に隷属する社会を現出させています。肉体の楽を優先する社会は心が置き去りにされる社会でもあります。そしてついには魂をもって生きている現実感さえ喪失させてしまいます。
山に入って過酷な日々を行ずると、日常生活が怠惰であればあるほど、肉体の痛みや苦しみを伴います。峻厳な山や谷を駆け抜けるとき、肉体と心が対峙して葛藤する。それが高まると、自分の存在を超えた神仏や曼荼羅の世界が目の前に出現します。そこで初めて、人間の命のありがたさやその肯定が始まるのです。
大峯奥駈への参加希望者の多くは、日常からの現実逃避ではなく、息苦しい現代社会の中で自分を前向きに変えたい、打開したいという気持ちからの参加です。「心の時代」と言われて久しい中で、私は「修験道ルネサンス」を提唱してきました。ポスト近代への、生命と魂の反撃が始まったのだと感じます。
修験道の賞味期限はまだまだ切れていません。物質文明社会が行き詰まり、自然が猛威を振るう今の時代だからこそ、その精神が求められていると私は思っています。
ー朝日新聞奈良総局版「人生あおによし」(平成27年11月29日掲載)掲載
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こういうことばかり、もう20年以上、訴え続けてきました。身内からもなかなか支持されなかった孤独な活動だった気もしますが、外からの応援団はたくさん得ることが出来ました。こういった新聞取材などもまさにその証左です。おかげで少しは修験道全般に対する世間の評価は上がってきたように思います。
でもまだまだですね。その真ん中で情報発信する立場にはありませんが、これからも私なりに頑張って行ければと思います。
*写真は奥駈修行の峯中のものです。
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