「自然に善悪はない」 ~田中利典著述集280816
「自然に善悪はない」 ~田中利典著述集280816
思い起こせば、2011年3月に東日本を襲った大震災、そしてそれに続く福島第一原子力発電所の事故について、当時のマスコミ等の報道では何度も何度も「想定外」と表現されていました。しかし、これっておかしなことです。
そもそも自然が起こす地震や津波を人間が止めることなどできるわけがありません。東日本大震災以降も、日本列島は豪雨や竜巻、台風災害など、毎年毎年、たくさんの自然災害に見舞われています。そのほとんどが予測すらできないのが実情です。これに対して、想定外という言葉に潜むのは、人知の範囲の話、たとえば政治上の駆け引きや経済的な計画などについて使われるべきものであり、自然に対する畏怖の心があるならば、地震や津波や台風に対して使われるべきものではないのです。
私たち山伏に言わせれば、自然にはもとより善悪はなく、津波が起きて原発が壊れようが、台風によって大雨がもたらされようが、大雪で交通がマヒしようが、それは自然が悪いのではなく、自然を甘く見たことの報いであると考えるべきなのです。どこかで自然を自分たちの都合で取り扱ってきたことの裏返しではないでしょうか。
ー拙著『体を使って心をおさめる 修験道入門 (集英社新書)』(2014,5刊)より
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この「自然に善悪はない」のフレーズは盟友の正木晃先生からいただいた言葉ですが、私はとても気に入っていて、東日本大震災を契機に、いろんなところでお話をしました。
東日本大震災以降も、たくさんの地震災害や台風、洪水、噴火など、うち続く災禍に日本列島は災害列島化しています。長い目でみればここ半世紀以上、日本列島は少し平穏な時代だったのかもしれません。鴨長明の「方丈記」を読むと、都の市中に死体がごろごろしていたような時代が何度もあったわけで、この国はさまざまな自然災害とともに生きて来たのです。
そんなことに思いを巡らせて書いた一文です。
*写真はかの大震災で一番私の心に残った写真です。
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