「グローバリズムとローカリズム」ー田中利典著述集280911
「グローバリズムとローカリズム」ー田中利典著述集280911
4年前に奈良新聞社に依頼されて書いたの記事です。
グローバルからローカルへは私のいま、一番の課題です。
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今や世は、グローバリゼーションの真っ只中にある。が、しかし、そのグローバリゼーションの綻びが、ローカリズムの時代の到来を告げつつある。
とはいえ、このグローバリズムは手強く、そう簡単にローカリズムに移るとは思われない。産業革命以後、ヨーロッパからはじまった近代は、アメリカという大国を生み、世界中を飲み込んでしまった。世界中にマクドナルドとケンタッキーフライドチキンのお店が並び、欧米主義に、まるであらゆる地域が右ならえしつつあるのが現状と言えようか。
数年前のベストセラーである数学者藤原正彦氏の名著『国家の品格』で、著者は「いくらチューリップが美しいからといって、世界中をチューリップだらけにしてはいけない。サボテンの花、ブーゲンビリアの花、桜の花、それぞれの国に相応しい花があっていいんだ」というようなことをお書きになっていた。私もそうだと思う。
グローバル社会は世界中をチューリップだらけにしてしまう価値観であるとするなら、どうすれば桜の花を守り、その国の国柄や風土を守ることが出来るのであろうか。
奈良は日本の文化の源である。精神文化の源でもある。奈良は神道を生み、仏教を土着させ、神仏習合の修験道を育んだ地である。
外来の文化を積極的に取り入れながら、我が国は独自の文化を成熟させてきたが、そこにこそ、日本のローカリズムの原点がある。
安易な欧米主義やグローバリゼーションに流されることなく、日本の国柄を守ることは近未来に懸けてのこの国の課題だと言えよう。
奈良新聞は奈良に根ざしたローカリズムの発信地だと私はかねてより思っている。私のいる吉野山の桜が、日本の花とその心映えを象徴しているように、奈良新聞が奈良の国柄を発信し続けることは、日本にとって大きな役割になるに違いないと私は大いに期待している。
ー2013年10月/奈良新聞・新聞週間の特集記事掲載「奈良新聞に期待する」
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「奈良新聞に期待する」といういささかヨイショした、奈良新聞の依頼で書いたものだが、これはどこででも言えることだと思っている。京都なら京都、綾部なら綾部、でである。
そういう文脈で読んでいただければ、いまもなお、新しい文章として読むに耐えるのではと思う。
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