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「日本文化の再生」ー田中利典著述集290101

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「日本文化の再生」ー田中利典著述集290101

あけましておめでとうございます。拙稿著述集の今年最初の投稿です。

金峯山寺の機関誌「金峯山時報」のエッセイ覧「蔵王清風」で書いた駄文を折に触れて転記していますが、今日は7年前のお正月の文章です。

少しも色あせてはいない感じがかえって、病巣の根深さを自覚させますねえ。

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「日本文化の再生」

新年明けましておめでとうございます。その新年ののっけから、ナンですが…今まさに、日本文化が危機に瀕しているように感じます。

明治維新の欧米化から百四十年。大東亜戦争の敗北から六十数年。哲学者梅原猛氏が指摘するように二度の神殺し(「反時代的密語~神は二度死んだ」)が、日本文化を破壊しつつあります。

梅原氏曰く、一度目の神殺しは明治の神仏分離。それは単に神仏の殺害ではなく、神と仏を共に尊んできた日本の精神文化の基層の部分の崩壊を意味し、そして崩壊させてのちに、新たに構築したのが天皇を神として奉り、国家神道を中心に据えて誕生した近代国家だったのです。

これによって我が国は東アジアで唯一、近代化にいち早く成功を収め、繁栄を享受するところとなりますが、肥大化しすぎた国家はその挙げ句、欧米列強との衝突によって、大東亜戦争に突入し、敢えなく敗戦を迎え、そして進駐軍政策の下、せっかく神仏分離をしてまで作った国家神道はみごとに解体され、天皇は人間宣言をして、二度目の神殺しが行われるところとなった、というのです。

さてここにいう文化とは何なのでしょうか。文化とはカルチャーであり、土地を耕すという原意を持ちます。 つまり文化とは元々は土地であり、風土であり、国土なのです。ドイツ・ワイマール共和国時代に、作家トーマス・マンはそれを、その風土から生まれた宗教だ、とも言っています(『非政治的人間の省察』)。

日本文化の危機は日本の風土の危機であり、日本の宗教の危機ともいえるでしょう。

いま、いろんな場所、いろんな状況下で危機が叫ばれています。世界的にグローバル資本主義が暴れ回る中、経済破綻、自然環境破壊、文明間の衝突、そして内側では、学級崩壊、家庭崩壊、重度の人格崩壊…などなど。それはもしかすれば明治以降の近代化百四十年の中で急速に広まったことであり、しかも単に日本だけの危機ではなく、世界的な文化の危機なのかもしれません。

実に、文明は文化を駆逐するのです。近代というバケモノは高度な物質文明社会、機械文明社会を産み出し、世界各地の文化を壊し続けてきました。文化は風土であり、習俗であり、宗教であるとするなら、世界各地にあったにその土地土地の風土が壊れ、習俗、宗教の消滅を生んだのは、近代文明がもたらした紛れもない災禍でありましょう。

決して飛躍的な考え方ではなく、そういう時代に生まれ合わせていることを、現今の宗教人は自覚しなければいけないのではないかと私は思っています。宗教人こそ、文化の担い手の最終砦なのです。とりわけ明治の神仏分離によって壊滅的な破壊の対象となった日本固有の宗教である修験道に身を置く私にとっては、痛みを持って実感するところであります。

「破壊は再生だ」ともいいます。宗教人はものごとをネガティブに考えず、ポジティブに考えなければなりません。ポジティブに、文化破壊の時代を生きなければならないのです。破壊によって再生がなされるなら、いまこそ再生の時ととらえ、行動すべきなのだと考えています。

ここ十数年、声を枯らして修験道ルネッサンスを提唱し続けた私の原点はまさにこの思いからなのです。文化は宗教なり…この金言を心に銘じて、今年一年もまた頑張り抜きたいと思っています。南無蔵王一仏哀愍納受悉地成就…

ー「金峯山時報2010年1月号所収、蔵王清風」より

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意気込んで書いていた7年前が懐かしい気もします。私なりにこの道を突き進んでいければと願っております。

*写真はイメージです。

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