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世界遺産「吉野・大峯」の魅力ー田中利典著述集290410

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世界遺産「吉野・大峯」の魅力ー田中利典著述集290410

過去に執筆した文章を折に触れて本稿で転記していますが、今日は平成18年に上梓された永坂嘉光先生の写真集に寄せた文章です。山折哲雄先生と並んで、解説を担当させていただくという、光栄なご依頼でした。その文章から末尾の一部を転載します。

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世界遺産「吉野・大峯」の魅力

「吉野・大峯」と大峯奥駈道が、『紀伊山地の霊場と参詣道』としてユネスコの世界遺産に登録され、山岳信仰や修験道の歴史と文化が新たな意義を見いだすきっかけとなった。この地が国際的にも評価されたのはなぜであろうか。

政治や文学の上でも沢山の足跡が残された史跡の宝庫、吉野。その魅力は多岐にわたって尽きないが、とりわけ注目されるべきは日本独自の宗教である修験道を育んできた多神教的風土と、それに関わるこの地が持つ歴史性、唯一性であろう。

明治期の神仏分離政策は修験道に打撃を与えただけではなく、有史以来、神も仏も分け隔てなく尊ぶという多神教的世界観の崩壊と、それを中核とする日本固有の精神文化の変容をも招くことになった。

われわれの先祖は、山や大自然からもたらされる豊かな恵みの中で、自然と共に生きる知恵を育み、多神教的風土の歴史を築いてきた。それゆえ、日本人一般の信仰は、元をたどれば、日本古来の神祇(じんぎ)も外国から来た諸仏も分け隔てなく、敬い拝むという大らかさに根ざしていたはずだった。

ところが、このような精神文化が、明治の欧米化・近代化政策以降、徐々に顧みられなくなってしまった。昨今の殺伐とした社会様相の中でますます人々の心が荒廃する原因もまた、日本人がこうした民族の歴史とその唯一性を忘れていった結果なのではなかろうか。

紀伊山地一帯、特に「吉野・大峯」こそは、日本固有の多神教的営みを育んできた修験道という希有の宗教文化をもっとも色濃く今日に伝える貴重な宝物である。「世界遺産」として認められる魅力も、ここにある。

「吉野・大峯には日本の心がある」とするなら、それは、忿怒の形相を湛える蔵王権現像や、大峯奥駈修行など修験者たちの修行や信仰を通して、近代化以前の豊かで美しい、神仏が同居する自然観が、この地に保たれ続けているからだと私は確信する。

吉野の四季は美しい。満開に咲き競った春の桜や、匂い萌え立つ初夏の新緑、紅色に染め上げられた桜紅葉の秋、そして白雪舞う冬景色。ただ吉野は四季折々にみせる山容の美しさを愛でるだけではわかりえない。この地の霊気と、その中で営まれた千古の祈りと歴史・文化に感応してこそ、ようやく知り得る美しさであろう。

ー永坂嘉光写真集『天界の道』(小学館刊、2006/10/23)所収解説、田中利典述「今に生きる修験道~吉野・大峯」より

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思えば金峯山寺時代はたくさんの仕事をさせていただいたものだと、改めて思います。ここ2年ほどはゆっくりさせていただきましたが、そろそろ過去の栄光ばかりを追わずに、前向きに仕事しなくちゃって、思います。
*写真は写真集『天界の道』。

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