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「天狗と山伏」③

 【天狗と山伏】③ 講師/金峯山寺長臈 田中利典

さらに昨日の続き・・・。

天狗にはさらにもう一つの類型があります。天狗は本当にややこしいのです。次は4番目に類型となりますが、怨霊としての天狗。

なにせ日本は怨霊信仰が大変盛んに行われます。怨霊信仰はのちに天神様となる菅原道真公の怨霊を筆頭に、たくさんの人々が祟り神や怨霊となって、大きな災いをもたらすわけですけれど、人間が化した天狗というのがあります。即ち増長した僧や恨みを持って死んだ人間が、怨霊化したという天狗なのです。

この天狗の中で一番有名な方が崇徳上皇です。天狗の王と言われている崇徳上皇は、鎌倉時代の保元の乱にかかわる天狗様ですけれども、怨霊をもってお亡くなりになり、これが、天狗になって災いをなした。『保元物語』『源平盛衰記』(鎌倉初期)には、崇徳院は怨念の為に、経文に血で呪文を記し、生きながら天狗となったとあります。

要約すると、父の鳥羽上皇から疎まれ不遇の時を過ごした(母は鳥羽院の皇后璋子であるが、実父は鳥羽天皇の父白河法皇と言われている)崇徳院は、異母弟である後白河天皇との対立から保元の乱を起こす。いささか気の毒な身の上ですよね。しかしながらこの戦には敗北し讃岐に流される。せめて、自らが写した経典だけでも都へ帰して欲しいと大乗経を都へと送るが、後白河方によって突き返されてしまう。「後世のためにと書きたてまつる大乗経の敷地をだに惜しまれんには、後世までの敵ござんなれ。さらにおいては、われ生きても無益なり」と絶望した崇徳院は髪も爪も切らず、生きながら凄まじき姿へと変貌したという。院は「日本国の大魔縁となり、皇(すめらぎ)を取って民となし、民を皇となさん」と舌の先を食いちぎり、その血を以て大乗経に呪詛の誓文を記して海に沈めた、と伝えられています。画像にもあるとおり、げに恐ろしき大天狗さんです。

 

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もう一つは他界の天狗。江戸期になると、今までの類型ではなくもっと身近に天狗が出てくるようになる。民間伝承の中で語られる天狗さんです。それは異界の天狗たちのことで、山で出会ったり、神隠しを行ったり、高位から来往をする天狗さんたちです。江戸時代には、子供が隠されたり、山に行くと変な天狗の笑い声が聞こえたり、天狗のはやしが聞こえたり、太鼓が聞こえたり、天狗の揺さぶりがあったり、天狗倒しがあったり、天狗沢と言われるところがあったり、天狗石があったり、天狗岳があったり、人々の生活に密着した形で天狗という形が出ている。

ことほどさように、調べれば調べるほど、天狗ってよくわからないな、と思いながらお話ししています。いろいろ調べた結果、井上円了さんとか柳田国男さんとか水木しげるさんとか、いろんな方が妖怪の天狗について書いておられるのですが、今日の話は「妖怪天狗覚書」というという所から引いて、まず類型の話をしました。で、今日はその全部の類型ではなく、3番目に語った山神としての天狗についてもう少し詳しくお話をします。いわゆる、みなさんが想定する山伏姿の天狗さんです。神・妖怪としての天狗です。

妖怪や天狗についてのご高説は井上円了さんや最近は小松和彦さんが有名で、いろんなふうに天狗を語られています。かの柳田国男さんは落ちぶれた神が妖怪だと言われる。そこまで言って良いかわかりませんが、霊格が落ちた神が妖怪であるというのはよくわかる。人が祀る、祀ることによって人にご利益が得られるものが霊格のよい神である。そうじゃなくて、人に災いする。高位から人に災いをなして、あまり人から祀られていないような存在。それが妖怪。そういう意味で、天狗さんというのは日本三大天狗のように、神として祀られるもあるし、妖怪として存在するものもある、といえるでしょう。

 

 

つまり、天狗は神と妖怪の間の両面を持ったものである、という要素がある。いわゆる皆が知っている妖怪は、赤ら顔の鼻の高の天狗であります。天狗は赤い顔で鼻が高くて、山伏の服装をしていて、山伏と同じように梵天袈裟をつけて、頭襟をつけていたりします。手には団扇を持つ。山伏の装束は不動明王の聖の姿を象ったものですから、神の力をみることとなります。ですから、この後申し上げます山伏と、山の神はよく似ているわけです。

 

 

えーと、山と神というとこれがまたややこしい。猿田彦の話です。今の天皇様の元始であるとされる天照大御神、天上界におられる天津神の神様方ですね。この天津神が高天原から、天照大御神の命を受けた邇邇藝命(ににぎのみこと)が高千穂の国に降りたちこの国をいくいくは治められるのですけれど、そのとき、お迎えしたのが地上界の国津神である猿田彦(猿田毘古)。そういう、猿田彦が天津神をご案内したという神話があるわけですけど、その猿田彦も山の神として天狗のイメージの中に入っている。

 

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調べていくともっとややこしいのが、日本にはユダヤ人が来ている伝説。秦氏というのはユダヤ人だったという事も言われていますね。その外国から来た人たちのイメージも天狗のあの異形の姿には内在をしている。異界のものが天狗なのです。

じつは天狗に限らず、いろんなものがごちゃ混ぜになって、できあがっているのが日本の文化。後で申し上げますが、いろんなものが内在して幾層にもかかわってきたのが日本の文化で、その一つの象徴がこの天狗という存在なのだと思い当たったのです。またもともとあった古神道に関わる国津神の猿田彦信仰なども内在している。天狗が鼻高なのは猿田彦と同じ姿ですし、欧米的ユダヤ外国人という、そういうものさえ全部こう混ぜこぜになって存在してきた妖怪天狗、神の天狗であるといえるわけです。

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魔王と言いますと大天狗。大天狗というのは、神様のように皆が信仰していくくらい力のあるもの。で、小天狗。いわゆる烏天狗とか木の葉天狗とか言われるもの。女天狗というのもいるそうで、まだ私は出会った事ないのですが、天狗のような女性にはあったことはあります…(笑)。

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