名医
一ヶ月に何度も、アトピーに効くという温泉巡りをしたり、いろいろ試みたがあまり効果はなく、日ごとに悪くなっていった。
2歳になる年のお正月に、結婚記念日を兼ねて、家内と息子の三人で有馬温泉に アトピー旅行をした。そのとき、ホテルの仲居さんがあまりにひどい息子の症状を見て、自分もかかっていたという宝塚の皮膚科の名医を紹介してくれた。
早速チェックアウト後に宝塚に向かい、その名医を訪ねたのである。聞きしにまさる混みようで、診察券を出して、実際に見て貰うまで、5、6時間は待たなければならない混雑ぶり。信じられないほどの混みようで、普通はそんなところはお断りが信条の私であるが、でも我が子のためだと、根気よく待って診察を受けたのだった。
今でも覚えているが、息子はふだん身体を触らせないのに、初対面にもかかわらず、先生にはむずがることなく診察をさせ、先生の指示で看護士さんが薬を塗ってくれると、なんとすやすやと眠ってしまった。
「田中さん。家が燃えているときどうしますか?消防車を呼んで、消しますよね。この子のアトピー性皮膚炎もいわば火事なんですよ。炎症って皮膚が火事だってことでしょ。だったらまず消してやらないと」といって少しきつめのステロイドを処方していただいた。ステロイドってどうなの?って思っていたが、「少しきつめでもまず先に消してあげた方がかえってステロイドを使う量が少なくて済むし、ともかく消さないと治療もできないのですよ。消したらあとは子供の成長に合わせてじっくりと治してあげればよいのですから・・・」と先生に叱られたことが今も脳裏を離れない。どんなに混んでいてもきちんとお話しをしてくれ、丁寧に薬の使い方を説明をしてくれたのだった。まちがいなく、名医であった。
それから毎月、あの大混雑の治療院に1年半ほどは足繁く通って、おかげですっかりアトピーが治っている。今では2,3ヶ月に一度行くか行かないかくらいでほとんどアトピーの心配がなくなった。
もう情けないくらいアトピーに苦しむ息子に立ちつくしていたあの頃が懐かしく思えるが、これも、かの名医の御陰である。
今日、2ヶ月ぶりに名医を訪ねる。
毎日毎日、朝の8時頃から途中ほとんど休憩をとることなく、昼の食事すら3時を廻ってしか取らず、夜は11時12 時までがむしゃらに患者をこなしている尾口先生。私はいつも頭が下がる思いでこの先生のことを尊敬し、感謝している。
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